16年前から美容整形に関する調査を始め、『美容整形というコミュニケーション』などの著書がある関西大学の谷本奈穂教授(人間科学)はこう指摘する。

「私の調査では、女性の5人に1人は美容整形を受けたいと思ったことがあり、述べ約8%の人たちが実際に受けている。これは決して少なくない数字です。そして整形を望む人とそうではない人の間には年齢や既婚・未婚の差が無く、学歴や収入の影響もわずか。むしろ、母親に勧められたり逆に娘に勧められたり、同性の家族や友人との日常的な会話や噂話、美容経験に大きく影響を受けています。そして10代前半~20代の若い世代では、インターネットで情報を得ていることが多く、約半数が自ら美容整形に関する情報にアクセスしたことがあると答えています。整形はより身近な選択肢になってきていると言えるでしょう」

 普通の中高生が、OLが、主婦が、普通に整形を考える時代の到来――ということだ。

 東京都内に住む会社員の女性、Bさん(25)は母親の勧めで美容整形を受けた1人だ。中学3年で二重の埋没手術を受け、その後も二重の再手術や目頭切開、小鼻の縮小、脂肪溶解注射などを受けている。怖がりでピアスホールも空けられないのに、メスを使った手術を受けてきたのは「この顔で生きていく方がよっぽど怖いから」だと話す。

 元モデルで目鼻立ちのハッキリした母親ではなく、父親似。女性が小学生のころから、母に

「一重だからアイテープしなきゃね。いまは整形も安いから」

と言われるようになった。テレビを見ていても、家族は女性芸能人の外見に「この子、可愛くない」「太ったんじゃない?」などと辛辣。Bさんは中学生になると何時間も鏡の前から離れられなくなり、常にメイク直しをしながら、どこを整形すれば効率的に変われるかを考え続けるようになった。醜形恐怖症だった。

 子役やモデルとして活動するようになっていたBさんに、母は酒に酔うと

「あんたぐらいの子はどこにでもいるんだから」

と暴言を吐いた。中学生で二重にするときも母が医者に聞いたのは、失明の危険があるかどうかだけだった。

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