08年にバンドのボーカルとしてデビューした祐太朗は、デビュー曲がハウス食品のCMソングになり(本人たちも出演)そこそこ注目された。しかし、その後が続かず、活動休止。それでも、12年には松山千春の自伝を原作とする舞台「旅立ち~足寄より~」の主役に選ばれ、松山のデビュー曲「旅立ち」のカバーでソロデビューも果たした。
が、当時27歳だったにもかかわらず、そのオーディションに出場できる上限年齢が「23歳」だったことから「八百長疑惑」が報じられることに。話題性優先で祐太朗を特別扱いしたのではというわけだ。結局、この舞台もブレイクにはつながらなかった。
そして一昨年、転機が訪れる。谷村新司のリサイタルに呼ばれ「いい日旅立ち」を歌ったことがきっかけで、全曲、母のカバーというアルバムをリリース。これが話題となり「24時間テレビ」から出演依頼が来た。ただ、本人は七光りという指摘もされるであろうテレビでの歌唱に逡巡するものもあったようだ。そこで、母に相談したところ、
「親の名前を使ってもいい。チャンスなんだから出ればいいじゃない」
そう背中を押された、というのである。これを機に、バラエティ番組でのトークも「解禁」状態に。祐太朗は「学生時代につきあっていた彼女とホテルに行ったら、母の曲が流れてきて集中できなかった」などのネタで笑いをとった。また、手作りのおにぎりがやたらとでかいといった百恵さんの主婦ぶりも明かされていく。貴大もバラエティで母親の話をするようになった。
「家庭を守る人間」の誇り
今回の出版も、おそらくそういった「息子応援プロジェクト」の流れのなかにあるのではないか。だとしたら、祐太朗がテレビで母の曲を歌い始めたことは、百恵さんにとっても転機だったといえる。芸能界やマスコミと訣別したいという固い決意が「親バカ」によって揺らいだのだ。
それは「百恵神話」にとって終焉の始まりかもしれない。子供の芸能活動に手を貸すのは、ほかの子持ち芸能人と変わらないことを意味するからだ。とはいえ、彼女にとってそれは別にかまわないことだろう。『蒼い時』のなかにはこんな思いも綴られている。