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高校野球の岩手県大会決勝で、最速163キロを誇る大船渡の佐々木朗希投手(3年)が登板を回避し、甲子園出場を逃がしたことが波紋を呼んでいる。テレビ番組「サンデーモーニング」(TBS系)内で張本勲氏が「絶対、投げさせるべき」などと“喝”を入れたことに対し、MLBのダルビッシュ有投手や菊池雄星投手、サッカー日本代表の長友佑都選手らがコメント。ネット上では張本批判が集中している。お笑い芸人・カンニング竹山さんの持論とは?
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決勝も投げたら良かったのにという気持ちは正直少しありますけど、あの判断で良かったんだと思います。大船渡高校の国保陽平監督は30代で若いけど、スポーツ科学をちゃんと勉強された方らしいし、何よりもそれまでの佐々木くんの球数が多かった。今回の件でプロ野球選手たちが言っているように、高校生にあんなに連投させるシステムをそろそろ変えるべきなんじゃないかとも思いますね。実際にプロで投げている経験者たちが「英断だ」と言っているんだから、ピッチャーという職業の肩の使い方や10代のころの苦労など素人にはわからないことがあるんでしょう。だから、ダルビッシュ有選手はこのままじゃダメだと言っているし、マリナーズの菊池雄星投手なんかも「日程を考えなきゃ」って言っているわけです。
佐々木くんのように、あそこまでずば抜けたエースがいるのはまれですが、高校野球は地区大会から本大会までエース1人を酷使することになりがちで、長い歴史の中、それを背負わされた子が何人肩を壊し、不幸なことになっているか。それを知っているから、プロ野球選手は止めるんでしょうね。
もう一方で、張本さんが言うように、あの子以外のナインのこれから人生もあるわけです。大学進学したり就職したりする子もいるだろうし、彼らが将来、営業職にでも就いたら「甲子園に行ったんですよ」「ああ、あのときの!」っていう話ができただろうにって考える人もいると思う。
でも、そうじゃないんですよ! 社会に出たら「あのとき甲子園に行けなかったナインです!」って言う方が絶対に盛り上がる。「佐々木はなんで投げなかったの!?」「いや~、ベンチは大変だったんですよ~」っていう話の方が、ものすごく使えるネタになると思う(笑)。
彼らの野球人生ということで言っても、今回の登板回避でそんなに変わらないだろうとも思うんです。地区大会であれだけ注目されていたらスカウトはたくさん来ていただろうし、そこで活躍できていなかったなら甲子園で急に活躍することも無かったはず。ここからは個人の実力の問題でしょう。もちろん甲子園に行きたかったという夢が叶わず、その悔しさはあるだろうけど、それが自分の所属するチームの判断だから仕方ないと思うんです。
ただ、僕は張本さんを批判するのもいい加減にしろと思うんですよね。何か言うと、すぐネットで炎上とか……。張本さんがなぜああいうことを言うかわかりますか? それは、じいさんだからです! どの世界でも一緒でしょ、「昔は俺らはこうやったんだ」って言う、じいさんのアレです。そういう人がいて、僕らもいる。だから「張本さ~ん、気持ちわかりますけど~」っていう感じで見なきゃ。「いや、おかしいだろ!」と言われればおかしいですよ、昔の人なんだから(笑)。しかも伝説のバッターで、王貞治、長嶋茂雄と並び天才と呼ばれた張本勲ですよ。物分かりが良かったらつまらないでしょ。
あのスポーツコーナーだって、若い人では成り立たないし、おじさん世代でも務まらない。初代の大沢親分とか張本さんとか、球界のレジェントが「喝!」って言うんだから、物分かりが良かったら面白くないでしょ。じいさんは「あの頑固オヤジ!」って言われるぐらいで良いんですよ。
甲子園というのはもはや日本の文化だし、特に夏の大会は風物詩。ファンがいっぱいいるから、いろんな意見を言う人がいる。時代に合わせて変えていきながら、みんなが楽しめばいいと思います。意見の違いは立場によるものでしょ。年配のオールドファンからすると、見たい気持ちから「なぜ投げなかったんだ!」になるし、張本さんのような伝説のプロ野球選手は「俺だって投げてきたんだ」って思いもある。一方、若い監督からすると今の野球はこうだという考えもあるし、若い選手たちの将来もある。もう一つ言えば、中継するテレビ局なんか、かなりがっかりしていると思いますよ。これは監督を非難しているわけじゃなく、大注目のスターが1人いなくなると視聴率とかビジネス面での数字も変わってくるからです。
大船渡高校に苦情の電話を入れてるやつもいるらしいけど、忘れちゃいけないのは高校野球はプロじゃなくて、教育の一環だってことですよね。将来を考えたら高校野球で燃え尽きるわけにはいかないし、世の中はスポ根を求めているわけじゃなくなっている。ぶん殴れば良いっていう“教育論”じゃダメでしょっていう時代です。
それに、今大会で注目されていたピッチャー4人のうち、大船渡の佐々木くんを含む3人が地区大会で敗退したのも印象的でした。星稜高校の奥川恭伸くんだけが勝ち残っていますが、1人のエースに背負わせていた野球からチームで勝ち抜くようなスタイルに、全国のチームが変わってきたのかなという感じもしています。