一方、脂質に富んだベーコン、ソーセージ、チーズ、ミルク、アイスクリームなどはよくないとされている。あとは大豆やナッツなどの植物性タンパク質だ。
さて、地中海食においてはワインについても言及されている。ワインを毎晩140mLくらい(あるいはそれに相当するビールや他のお酒)が推奨されているのだ。男性だとお酒は2杯、女性だと1杯まで、が推奨だという(Curtis BM et al. Postgrad Med. 2002 Aug;112(2):35–8, 41–5)。
ワインと健康についてはあとで述べるが、地中海食にはワインも組み込まれているのが興味深い。地中海食は非常に多様な推奨をまとめておこなっている。
このような複合的な取り組みで、全体的に健康になりましょうという発想だ。日本にありがちな「要素還元主義」、「なんとかを食べれば健康になれる」とか「なんとかは止めなさい」とか「健康になれるたったひとつの方法」みたいなアプローチとは真逆を行っていることに注目してほしい。
さあ、ずいぶん回り道をした。しかし、この回り道は「健康に良い食生活とはなにか」を議論する際に必要な基本的な考え方を学ぶために、どうしても必要なものだった。演繹法を使い帰納法を使う。EBMを活用し、人間の健康に寄与するベストなエビデンスを活用する。ただし帰納法にも限界があるので、そこはご用心。そして「要素還元主義は」しばしば間違っている。
■たばこは特定のがんの発症に寄与する一つの因子だ
「要素還元主義」が間違っているということは、例えばニュートン力学みたいにある初期条件を与えてやると球体の運動が予測できる、みたいな単純な図式は人体や医学や健康や飲食物には当てはまらないことを意味している。
最近、国立がん研究センターの研究者たちが受動喫煙と肺がんの関連についての研究をまとめた。受動喫煙とは、自分が喫煙するのではなく、周りにいる人が喫煙することで煙による影響を受けている状態をいう。研究者たちは受動喫煙によって日本人の肺がんリスクは高まることを疫学研究で示したのだ。