実際、歯ぐきから出血があった場合なども、歯ブラシでその部分をしっかりみがいたほうがいいのです。私たち歯周病専門医も、

「出血があるということはそこで歯周病菌が繁殖して歯ぐきに炎症が起こっている証拠なので、怖がらずにみがいてください」「ただし、歯ぐきに傷をつけないように適切な力でみがいてください」

 と話しています。

 実は歯ぐきマッサージを科学的に検証した研究報告があります。神奈川歯科大学大学院歯学研究科災害医療・社会歯科学講座の山本龍生教授のグループがおこなったもので、歯肉炎(軽度の歯周病)の患者さんに歯ぐきマッサージをやってもらい、細胞増殖の活性度(歯ぐきを細菌から守る歯肉溝の上皮の細胞増殖の活性度)を、歯科衛生士がおこなうスケーラーによる歯石除去の場合とで比べたのです。

 なお、この場合の歯ぐきマッサージは一本の歯につき、歯ブラシで20 秒間振動を加える方法で、正しくおこなうと約10~15分かかる計算です(やり方についてはインターネットなどで検索してみてください)。

 その結果、歯ぐきマッサージのほうがスケーラーで歯石を取り除いた場合と比べ、2倍以上活性度が高くなりました。炎症を示す白血球の数が減っていくスピードも速く、歯肉炎の炎症によって傷ついた歯ぐきの治癒は歯ぐきマッサージによって促進されること。さらにスケーラーでの場合と比較して高い、となったのです。

 もっとも正しい方法でマッサージを毎日励行することは、簡単ではないでしょう。また、歯周病の治療、予防を徹底するには歯ブラシでは届かない、歯ぐきの奥の歯石の除去も必要です。

 幸い、片山式から時を経た今、歯周病の治療は進歩し、歯槽骨が吸収されてしまった場合など、壊れた歯周組織を再生させる「再生療法」などもあります。

 このようなことから、歯科医院での治療、メインテナンスとあわせて、歯ぐきマッサージをうまく取り入れるのがいいと私は思います。

○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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