最近、「歯ぐきマッサージ」という言葉を耳にする機会が増えました。歯科医院でマッサージをしてくれるところもあるようです。いったい、どのようなものなのでしょうか。マッサージの目的は? 歯周病予防に効果はあるのでしょうか。『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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「歯ぐきマッサージ」には手指を使ってじかに歯ぐきをマッサージする方法と、歯ブラシで歯ぐきをマッサージする方法の二つがあります。
前者は歯科医院で歯科衛生士がおこなっていることが多いようですね。歯ぐきを触ってもらうのは気持ちよく、リラックス効果はあるでしょう。歯ぐきの血流改善効果も期待できます。ただし、歯周病に対する効果は未知数ですね。
後者はセルフケアとして歯みがきの際、自分でマッサージをします。実は歯ブラシによる歯ぐきマッサージは、30年ほど前、バブルの頃に一大ブームになりました(覚えている人がいらっしゃるかもしれませんね)。
歯科医師の故・片山恒夫氏が考案した「片山式ブラッシング」という方法で、歯槽膿漏(しそうのうろう、歯周病のことです。当時はこう呼ばれていました)の治療として、1日3時間、朝、昼、晩1時間ずつおこなうというもの。歯と歯の間や歯との境目の歯ぐきを歯ブラシで刺激します。
今にして思うと1日3時間、というのはすごいですね。片山式で「重度の歯槽膿漏を改善したケース」なども紹介され、師事する歯科医師も大勢いました。私も講演会に行ったことがあります。マッサージに関する本も複数出て、ずいぶん売れたようですから、実践した読者の方もたくさんおられるでしょう。マスコミにもしばしば取り上げられ、朝日新聞に掲載されたこともありました。
1日3時間みがくことが推奨されるかどうかはともかく、歯ぐきのマッサージ自体は歯周病に一定の効果があると思います。なぜなら歯周病によって炎症が起きている歯ぐきは歯垢(しこう)がたまり、そこで歯周病菌が繁殖しています。マッサージによってこの部分が清掃され、ある程度、病巣を取り除くことができると考えられるからです。炎症がおさまれば腫れていた歯ぐきも引き締まってくるでしょう。