ジュビロ監督時代の名波浩氏 (c)朝日新聞社
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 目下、2019年J1で最下位に沈むジュビロ磐田。先月末にはレジェンド・名波浩監督が辞任を表明。この影響もあったのか、41歳のJ1最年長プレーヤー・中村俊輔がJ2・横浜FC移籍を決断するなど、チームは激震が走っている。

 名波監督と言えば、ご存知の通り、日本代表が98年フランスワールドカップ初出場を果たした時のエースナンバー「10」。2002年日韓ワールドカップは負傷で出場できなかったものの、代表屈指の名選手だったのは間違いない。2008年の引退後は解説者として活躍したが、冷静かつ鋭い戦術眼と分析力で周囲を驚かせ、「監督になったら確実に成功する」と評されていた。そして41歳だった2014年9月、ペリクレス・シャムスカ監督を解任した古巣・磐田の指揮官に満を持して就任。2年目の2015年にはチームを3シーズンぶりのJ1復帰へと導き、2017年にはJ1で6位に躍進させるなど、光る手腕を発揮していた。

 2018年はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得への期待も高まったが、まさかの低迷。16位で東京ヴェルディとのJ1・J2入替戦に回る羽目になった。最終的には残留を果たしたものの、前向きな材料が乏しいシーズンに終わった。だからこそ、今季は同じ轍を踏むわけにはいかなかったが、戦力的な上積みが乏しかったこともあり、スタートダッシュに失敗。「名波限界論」がまことしやかにささやかれるるようになった。もともとはボールを支配しつつ主導権を握るスタイルを好む指揮官も、5月3日の浦和レッズ戦で見せたような超守備的な戦い方にシフト。貪欲に勝利を追い求めたが、最後の最後までチーム状態は上向かなかった。こうしてかつて名選手だったエリート監督の1人が現場を去ることになってしまった。

 名波監督に限らず、日本サッカー界ではワールドカップ出場経験のある指揮官が際立った成功を手にできていない。98年フランス組では、これまで井原正巳(柏ヘッドコーチ)、秋田豊(解説者)、小村徳男(解説者)、山口素弘(名古屋育成ディレクター)、呂比須ワグナー(元新潟)、相馬直樹(町田監督)、名波という7人の指導者がJリーグ監督を務めてきたが、ある程度の成果を挙げたのは、アビスパ福岡時代の2015年にJ1昇格を果たした井原氏と、町田をJ2で大きく躍進させた相馬監督くらい。ただ、両氏ともJ2での成績であり、現役時代の輝かしい実績に比べると、やや見劣りする部分はどうしても否めない。

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