第七只見川橋梁を渡る2009年5月に運行された臨時快速「SL会津只見新緑号」 (C)朝日新聞社
第七只見川橋梁を渡る2009年5月に運行された臨時快速「SL会津只見新緑号」 (C)朝日新聞社
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手前側のプレートガーダーが流出したままの第五只見川橋梁 (C)朝日新聞社
手前側のプレートガーダーが流出したままの第五只見川橋梁 (C)朝日新聞社
長期運休が続く区間にある会津大塩駅(撮影/武田元秀)
長期運休が続く区間にある会津大塩駅(撮影/武田元秀)
現在の会津若松側の終点となっている会津川口駅 (C)朝日新聞社
現在の会津若松側の終点となっている会津川口駅 (C)朝日新聞社

 JR只見線(会津若松~小出=こいで=間、135.2キロ)は2011年、「平成23年7月新潟・福島豪雨」によって橋梁(きょうりょう)流失などの甚大な被害を受け、途中の会津川口~只見間27.6キロで長期運休が続いている。しかし2017年に「上下分離方式」による鉄道での復旧が福島県とJR東日本との間で合意され、21年度中には運行再開の見通しとなった。被災から運行再開まで、10年あまりの歳月が費やされることになる。この区間は建設時、巨大ダムや発電所の工事専用鉄道としてわずか1年4カ月の工期で造られた路線だった。

【画像】鉄橋の一部が流出したままの第五只見川橋梁 

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■インバウンド客にも大人気の只見川第一橋梁

 只見線は地元住民の生活路線、高校生の通学の足としてはもちろん、“絶景の秘境路線”として鉄道ファンはもとより、観光客の人気も高い。ことに復旧区間の会津桧原(ひのはら)~会津西方(にしかた)間に架かる只見川第一橋梁は、季節や天候によってさまざまに姿を変える絶好の撮影ポイントとして知られている。

 只見線沿線の金山町に暮らす奥会津郷土写真家・星賢孝(ほし・けんこう)さんが、沿線の写真をSNSで広く発信したり台湾で写真展を開いたりしたこともあって、いまでは只見川第一橋梁のビューポイントを台湾や中国、タイなど、アジア各地からのインバウンド客も多数訪れるようになった。会津若松駅に近いホテルは常にほぼ満室。朝の只見線会津川口行き列車は、都会のラッシュアワー並みの混雑が続いているという。

 会津バスも4月から11月にかけての土・日曜・祝日に、「撮る、乗る、渡る。バスでつなぐフォトジェニック只見線の旅。」をうたい、只見線にほぼ並行する会津若松駅~会津川口駅間の路線バス・只見川線のフリー乗車券などを販売する「奥会津ぶらり旅」キャンペーンを展開している(JR乗車券は別売)ほどの人気ぶりだ。

 第一只見川橋梁最寄りの三島町も、会津宮下駅から第一只見川橋梁のビューポイントに近い国道252号沿いの「道の駅 尾瀬街道みしま宿」まで、町営バスの運行を始めた。道の駅がインバウンド客であふれる様子も、いまでは日常の風景になった。

 只見線沿線は新緑や紅葉のシーズンはもちろん、夏には川霧がもうもうと立ち込め、冬には日本有数の豪雪地帯に雪の華が舞う。そんななかを走る列車は、乗っても撮っても現実を超越した光景を体感させてくれる。

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昭和を彷彿とさせる夏休み号が運航予定