昔のような家父長制の強い家制度が崩れ、いわゆる「友達親子」という言葉も市民権を得た。時代の流れを象徴するかのように、両親を「お父さん、お母さん」などではなく、名前やあだ名で呼ぶ子どもたちが現れ始めている。
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子育てや育児の情報を発信している「ベネッセ教育情報サイト」が2018年、全国の小学4年~中学3年の子どもを持つ保護者360人を対象に行ったアンケートによると、保護者を名前で呼んでいる子どもは約3%だった。09年は1.5%だったことから、その割合は増加している。
中学生のころから両親を名前で呼んでいるという神奈川県の会社員男性(25)もその一人だ。
「幼いころは『パパ、ママ』でした。母親がそう呼ばせたかったそうです。ただ小学校高学年にまでなると、『ママ』と呼ぶと周りから驚かれるんですよね。それから徐々に呼びづらくなって、何度か呼び方を変えようと試みました。『お母さん』とか『おふくろ』『おやじ』とか。でも、いまさら呼び方を変えようとしても違和感があるし、どこか恥ずかしさを感じた。結局、自然と両親を名前で呼ぶようになっていきました」
名前で呼び合う関係については、「親子の関係が崩れる」「距離感が近くなり、包み隠さず話し合える」といった意見もある。家族社会学を研究しているお茶の水女子大学の小玉亮子教授は、「呼び方にこだわる必要はない」と話す。
「子どもの成長にしたがい、親子が依存から自立へと関係を築いていけるのであれば問題ありません。『ババア』などと呼び方自体に侮蔑的な意味が含まれていなければ、呼び方は何でもよいと思います」
前出の男性のケースについては「呼び方を変えたことで自立につながった」と分析する。
「アメリカなどでも、幼少期は『ダディ、マミー』と呼び、徐々に『ダッド、マム』と変えていきます。日本であれば『パパ、ママ』から『お父さん、お母さん』といった具合ですね。親子の適切な距離や関係は、子どもの成長段階によって変わってきます。呼び名はその関係性をつくる重要な要素の一つ。『パパ、ママ』は小さい子どもは呼びやすいですが、小学校入学が、自立のために呼び方を変える一つのタイミングですね」