


そもそも、ディスプレーの色が正しくないと何がいけないのだろうか。
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一つは、他のディスプレーやプリンター出力と色がそろわないという、カラーマッチング上の問題だ。印刷したとき画面とプリンターの色が違ったり、せっかくレタッチした写真をネットにアップしても、自分が想定した色と違って見られたりすることになる。もう一つは、間違った色を見ているのかもしれないという疑心暗鬼が、レタッチ時に自信を揺るがせて写真を楽しめなくなること。
このどちらかに心当たりがあるのなら、改善が必要だ。逆に使っていて不満や不安がないなら、その人の要求レベルでの正しい色は出ているといえる。大きく色が違わないプリンターと一致しているなら、あまり気にしないという考えもある。
■ICCプロファイルとディスプレーの対応
一方で、正しい色が出ているという確信が欲しい人もいるだろう。プロはもちろん、趣味の道ならなおのこと。そこで避けて通れないのが「ICCプロファイル」だ。
ICCプロファイルの役割は、「理屈上の色」と「その装置で出せる色」の整合性をとることにある。sRGB(エス・アールジービー)やAdobe RGB(アドビ・アールジービー)などは、前者の理屈上の色の規格だ。画像データやパソコンソフトでは、この「理屈上の色の規格」で色を取り扱う。一方、ディスプレーやプリンターは、データ上の色をそれぞれが再現できる範囲で、うまく調整して収める。
これらをうまく調整するのに必要な情報こそが、画像データにも付加され、ディスプレーやプリンター(プラス用紙)ごとに用意される、ICCプロファイルだ。このICCプロファイルに基づいてカラーマッチングが正しく機能したときのディスプレー表示が正しい色だ。
実際には画像に埋め込まれたICCプロファイルに基づいて、表示するソフトウェアがディスプレーのICCプロファイルに沿って、できるだけ色に差が出ないように調整している。
液晶ディスプレーでsRGBやAdobe RGB対応と書いてあることがある。大きく二つの意味がある。sRGBとAdobe RGBでは使う色の範囲(色域)が異なる。「sRGBカバー率99%」とあれば、sRGBで決められた色のうち99%は再現できるという意味になる。
一方で、特に調整しなくてもsRGBやAdobe RGBの画像データを表示できるモードが用意されていることも少なくない。実際こうしたモードを使うだけでも、大きく色が外れていないことが多い。色のことで困っていない&不安も不満もないなら、何もしないことも選択肢の一つだ。以下で説明していくのは、そのような状態を実現するためにディスプレーの色を正しく出す必要がある場合で、既に目的地にいるのなら余計なことをしないことも賢い選択だ。正しい色のために、何かしなければならないという強迫観念は、負のスパイラルを生むこともある。あまり追い込まず、気軽に色を考えることも、ディスプレーの色を正しく出すためのコツの一つだ。ただし、その場合でもディスプレーにドライバー/ICCプロファイルが付属しているなら、インストールしたほうがいい。