杉本賢治さん(本人提供)
杉本賢治さん(本人提供)
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 連日、「中高年のひきこもり」が話題になっています。きっかけは川崎殺傷事件の岩崎隆一容疑者(51歳)が「ひきこもり傾向」だと報じられたこと(5月29日)。そして6月1日に、元官僚の澤英昭容疑者(76歳)が、ひきこもりの息子・熊澤英一郎さん(44歳)を殺害したことです(以下、練馬事件)。

 川崎殺傷事件をひきこもりと短絡的に結び付けるのには疑問も残りますが、かつてこれほどまでに「中高年のひきこもり」に注目が集まったことはありません。ひきこもりは「若者の問題」だと言われてきたからです。今回の事件は、ひきこもりの若者やその家族にも波紋が広がっています。

「いずれは自分も親に殺されるのかもしれないと思った」(20代・ひきこもり男性)

「不登校の娘と心中しようと思ったことは一度や二度じゃない。息子を刺した父親のことは他人ごとに思えない」(50代・ひきこもりの子を持つ親)

 そんな声が聞こえてきます。

 そこで事件を追うだけでは見えてこない「ひきこもりの日常」を知るべく、ひきこもり経験者で現在も「半分ひきこもりの生活」を続けているという杉本賢治さん(57歳)に話を聞きました。

*  *  *

――ご自身のひきこもり経験と現在の生活のようすを教えてください。

 私がひきこもったのは高校中退後の10代後半と、その後、大学卒業後からの20代後半です。ひきこもりの期間は累計で9年ほどですが、今も正社員としては働いていません。おもに清掃のバイトをしています。バイトの報酬は自分の社会保険料や通信費、取材費などに充て、母と二人暮らしの生活費は父の遺族年金などで賄っています。

 現在の生活は「半ごもり状態」というところでしょうか。完全なひきこもりではなく、半分ぐらいひきこもっている。その理由は、バイト以外に個人的なインタビュー活動をしていて、自分の働き方のために時間を割かれるからです。

 2年前から母が認知症になり要介護状態になりました。兄弟は離れて暮らしていますので、私が母の世話をしています。家事はある程度、母と分担しながらやっています。

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「犯罪予備軍」という印象が強くなった