先発、中継ぎ、抑えのそれぞれの役割で、ある程度の数字を残すには、チーム事情が大きく関係する。例えば、先発で5年連続二桁勝利を収めた投手を、翌年から中継ぎや抑えにまわすケースはそう多くないだろう。前例はないわけではないが、そういうのは、一時的な応急処置のようなもので、最終的には元の役割に戻るパターンが多い。
上原氏も巨人時代、2007年に抑えとして32セーブをあげたが、主に活躍したのは先発。本格的に配置転換となったのはメジャーリーグへ移籍してからだ。上原の凄さは、この配置転換にうまく順応できたことだろう。先発と中継ぎ、抑えでは、調整方法もまったく異なるし、何より登板数は倍近くに増える。また先発と違い、登板の有る無しが分かりづらく、つねに肩を作っておかなければならない過酷な役割だ。しかし、上原氏はこうした厳しい環境下でも、レッドソックス時代には26試合連続無失点、34人連続アウトの球団記録更新、2013年のリーグチャンピオンシップでは1勝3セーブ9奪三振無四球無失点でMVPにも選ばれるなど、メジャーリーグで争奪戦が巻き起こるほどの信頼を勝ち得た。現役生活20年のうち、先発として10年、残りの10年を中継ぎや抑えとして成績を積み重ねることができた結果が、トリプル100の偉業に結びついたといえるだろう。
メジャーリーグだけでなく、日本でも近年、投手の起用法は、どんどん多様化している。上原氏に続いて、トリプル100を達成する投手は現れるのだろうか。今後の展開に期待したい。(AERA dot.編集部/岡本直也)