2019年、東都医療大(埼玉・千葉)が、創立10周年を機に「東都大」に校名を変更した。あるテレビ局のドラマ制作担当者がこんな話をする。
「それ、ほんとうですか。困りました。ドラマで架空の大学として東都大はよく登場しますが、もう使うことはできないでしょうね。東都大の教授が殺人、なんてストーリーでは、確実にクレームが来ますから」
たしかに「東都大」という名はドラマ、小説、漫画で架空の大学としてよく登場する。たとえば、高視聴率を誇ったドラマ「白い巨塔」。舞台は浪速(なにわ)大学病院となっている。以下、フジテレビの同ドラマ出演者を交えて登場人物を紹介すると、主人公の財前教授(唐沢寿明)、里見助教授(江口洋介)は浪速大出身だが、財前教授の指導教官、東貞蔵教授(石坂浩二)は東都大出身となっている。浪速大は大阪大、東都大は東京大がモデルといわれる。
東都大は「太陽にほえろ!」「JIN-仁-」「特捜最前線」「相棒」などにも出てきた。漢字の並びや語呂がいい、という理由らしい。「東」京大と京「都」大をつなぎ合わせた、「東」の「都」にある、などの理由もある。
これからは東都大が使えなくなる。ドラマで東都大教授が教え子に手を出した、東都大の学生が人を殺した、といったストーリーは、名誉毀損ものになりかねない。
前出の浪速大も、じつは、かつて実在していた。大阪府立大の旧校名で、1949年から1955年まで浪速大と名乗っていた。「白い巨塔」は作家・山崎豊子の原作がベースとなっている。同作品が初めて世に出たのは1963年の「サンデー毎日」連載なので、時期的には「セーフ」だ。
ちなみに東都の名は、「東都大学リーグ」という、関東地区の大学野球のリーグ名にも使われている。こちらは「東都」という言い方がすっかり定着している。東都大学リーグの加盟校である亜細亜大野球部の関係者は「関係ないですよ。でも、東京六大学に対抗して、『東都』って強くアピールしていたけど、すこし言いづらくなるかな」と話す。