吹原:マウンティングする人間には威厳を感じないし、印象も悪くなる。マイナスしかないですよね。
田村:本当にもったいないことです。
■プライドよりも大事なのはパフォーマンス
吹原:マウンティングされた時に、田村さんはどう切り抜けているのですか。
田村:マウンティングに対するいちばんいい返しはなんだろうと考えたことはあるんです。そして、思い至ったのは、大げさに「おめでとう(Congratulation)!」と言うこと。文面のまま受け取るのならば祝福の言葉ですし、こちらの大仰さに気づけば、恥ずかしさで相手は自省してくれます。
吹原:僕が便利だと思うのは「マジっすか!」と「すげえ!」です(笑)。相手を気持ちよくさせながら、話を終わるのを待つのが、ベストなマウンティング対策ではないでしょうか。上の世代の方に「俺の若い頃は……」とこられたら、「僕の時代にはないので驚きです!」というのも、有効かなと思っています。
田村:お若いのに、その境地に至れているのはすばらしいことです。私は、かつて、マウントに対してマウントで返そうとした時期があったんです。でも、それは疲れますし、マウント勝負に勝っても、相手を敵に回す可能性を増やすだけでした。
吹原:でも、僕の場合は、マウントをとられてもじつはイヤじゃないんです。自慢話をされると、本当にすごいと思うほうなんですよ。今回、脚本を考えていて思い至ったのは、なぜマウントをとられて嫌な気持ちになるのかということ。その一因は、多少なりともプライドを傷つけられるからだと思うんです。でも、僕の場合は、プライドよりも仕事のクオリティを上げることのほうが優先事項。だから、マウンティングくらいで相手がいい気持ちになって仕事に協力してくれるのなら、それはうれしいことなんです。
田村:「アホとは戦うな!」の真髄ですね。私も損して得取れの精神で生きるようにしています。小さな話ですが、飛行機の頭上の収納棚に荷物をどちらが先に出し入れすることも、マウント争いですよね。昔は、私もムキになっていたこともあるのですが、今はむしろほかの人を手伝ってあげるようにしています。協力したほうが結果的により短時間で乗り降りできますし、それで嫌な気持ちになる人もいません。