そういう意味で、特筆しておきたいのが剛力彩芽である。平成25年に『ミュージックステーション』で見せたパフォーマンスは今も語り草だ。自らが出演する「ランチパック」のCMソングでもあったデビュー曲『友達より大事な人』を披露したが、アカペラ気味の歌いだしでいきなり音をはずし、そのままグダグダで歌い続けた。さすがに制作サイドもまずいと思ったか、あるいは事前からそのつもりだったのか、後半ではマイクの音が消され、CDの声に切り替わる(つまり、口パク)という状況が出現。それでいて、特技のダンスはキレッキレの見事さで、そのギャップもじつに珍妙だった。
その歌はどこか、浅田美代子や大場久美子、伊藤つかさに新田恵利といった昭和アイドルの頼りなさを思い出させるもの。歌番組を家族で見るときなど、けなされやしないかと心配したり恥ずかしくなったりした記憶を甦らせるものだった。が、剛力がひと味違うのはその強さだ。ネットでは放送事故とまで揶揄されたのに、本人はブログにこう綴った。
「いやぁ~、緊張した!!んでも、すっごく楽しかったの」
芸能人たるもの、これくらいのポジティブさを見せてくれたほうがいっそ清々しいし、ネットでも「(全部が)口パクのAKBよりは好感が持てた」という感想が。たしかに、AKB・坂道系のグループにキレイでダイナミックなフォーメーションダンスをいくら見せられても口パクでは興醒めという人もいるだろう。
ただ、剛力がのちに炎上も辞さない熱愛アピールで本当に炎上してしまったように、この手の強さは今、あまり歓迎されない。平成アイドルのトレンドはやはり、嵐などに象徴されるグループの仲良し感なのだ。
そんななか「ひとりで歌うアイドル」を四半世紀近くにわたってやっているのが森下純菜である。先日はオリコンニュースで「現役最古参アイドル」としてとりあげられた。じつは彼女が芸能界入りする際の「面接」に同席した経緯もあり、あれからもうそんなにたつのかと感慨深かったりもする。