また、高精度な治療を行うために撮影技術は一層進化している。治療部で撮影したCT画像を、診断部で撮影したMRI画像と合成することで、より情報量の多い画像を得ることができる。

「ぴったりと同じ位置に重ね合わせるのは、かなり高度な技術を要します」(唐澤医師)

 放射線治療ではCT画像を利用して体内の構造を把握し、どこにどれだけ放射線を当てるか計画する。その際にCT画像とMRI画像を組み合わせることで、がんと正常組織の違いをしっかり区別することができる。脊椎のような重要な部分の場合、治療範囲が1ミリずれるのも危険だ。そのため、こうした技術が必要になる。

 コンマ数ミリ単位の計測をして、ターゲットだけに放射線を当てるために、これを得意とするのが「トモセラピー」だ。治療の前にCT撮影でがんの位置照合をし、強度変調放射線治療(IMRT)を行う。見た目はCT検査機のようだが、この筒状の装置が、患者の周りを回転しながらあらゆる角度で細いビームを照射するという。

「湾曲した豆のような形のがんであっても、トモセラピーなら治療したい部位に沿って放射線を当てることができるのです」と唐澤医師は語る。診断と治療、両方の技術が合わさることで、がん治療の現場は支えられている。(文/白石 圭)

◯唐澤克之(からさわ・かつゆき)
都立駒込病院放射線診療科治療部部長。専門は放射線腫瘍学(高精度放射線治療、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、下部消化管腫瘍、甲状腺がん)。