ほかにも「革年改元」というものもある。これは干支の甲子、辛酉、戊辰の年には世が乱れるという中国の故事によるもの。これらの年を前にした天皇が、ゲン担ぎに改元したのだ。なお1868年は戊辰の年に当たるのだが、革年改元は行われなかった。その結果か偶然か、戊辰戦争が起こり江戸幕府は崩壊、明治へとなだれ込む、まさに大政変の年となった。

「祥瑞改元」は反対に縁起のいい兆しを機にしたもの。650年には純白のキジが宮中に献上されたことから白雉に改元された。また708年には現在の埼玉県秩父市から銅の鉱脈が見つかったと喜び、和銅に改元している。

 また「撥乱反正」といって、戦乱や社会の荒廃が続いたときに改元することもあった。

 こうして世の出来事を受けて、元号というのはたびたび変更されるものだった。だから一代のうちに、何度も改元した天皇もいる。4、5回の改元を行った天皇というのは珍しくもない。最も多いのは南北朝の立役者、後醍醐天皇で、在位21年間に実に8回も改元をした。自分の即位に合わせた代始改元、撥乱反正が各1回、革年改元が2回、それに災異改元が4回だ。

 災害や政変が突発的にやってくると元号も変わることがあるわけで、そのあおりをくって万延(1860~1861年)や元治(1864~1865年)はわずか1年だけで終わってしまった。暦仁(1238~1239年)に至ってはたった2カ月あまりの元号だった。その前の嘉禎のときに災害が多発したので暦仁へと災異改元をしたのだが、なお地震や噴火などが相次いだため、再び災異改元となったとか。これが日本で最も短い期間の元号だ。反対に1400年の間で、最も期間の長かった元号は……昭和なのだ(62年と14日。2番目は明治で44年と7カ月)。

 遠く飛鳥の時代から重ねてきた元号も、令和で248番目となる。いったい、どんな時代になるのだろうか。(文/室橋裕和)

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