「透析医療においては、透析導入初期の死亡率が最も高くなります。合併症の症状が出る前に、できるだけ早期に導入できるよう、計画的にシャントの作成や透析の導入がおこなわれることが重要であり、日本ではそれができているために導入初期の死亡率も少ないと考えられます」(中元医師)

 また、専門知識を有する医師、看護師、臨床工学士、栄養士、薬剤師などが連携するチーム医療が確立していること、安全管理や衛生管理、感染制御などにより医療環境が良好であることも重要です。

■優れた患者支援や保険制度にも注目

 さらに、日本の透析医療が世界に誇れるところは、その優れた医療が「均一化されていること」と中元医師は話します。

「日本では、世界で唯一、国ではなく学会(日本透析医学会)が全国の透析実施施設の成績データを集めて公表しています。それによると、優れた透析医療が都市部などの一部の医療機関に集約されているわけではなく、全国どこの施設でも、安全性や技術力に大差はないと考えられます。安心して透析治療を受けられる態勢が全国的に整っているといえるでしょう」

 患者への教育や自立支援を積極的に実施している医療機関が多いこともポイントだといいます。看護師や栄養士による食事や生活の指導など、病状をコントロールするための管理が徹底されていることも重要です。

 優れた医療保険制度により患者の経済的負担が少ないことも、予後に関係すると考えられます。末期腎不全患者は、透析医療に関わる1カ月の自己負担が1万円(所得により2万円)です。過去のデータでは、米国と比較して、日本の透析医療では年間の入院率が約3分の1、社会復帰率は約4倍という報告もあります。

「透析患者数は世界中で増加しており、今後も増加することが予想されます。日本の優れた透析医療を広く世界に普及させることで、世界の透析医療の発展に貢献できることを期待しています」(同)

(文・出村真理子)

※週刊朝日ムック『「このままだと人工透析です」と言われたら読む腎臓病の本』より

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