人工透析を受ける患者数は年々増加しており、2017年末の時点で33万4505人に上り、新規透析導入患者は4万959人と報告されています。もし医師から「人工透析です」と言われたら、「もう終わりだ」と思ってしまう患者もいますが、悲観することはありません。なぜなら日本の透析医療は非常に優れているからです。週刊朝日ムック『「このままだと人工透析です」と言われたら読む腎臓病の本』では、その理由を日本透析医学会理事長の中元秀友医師に聞きました。
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日本の透析医療は、世界の「トップレベル」ではなく、まさに「トップ」として誇れるものです。その理由として、諸外国と比較して合併症が少なく死亡率も低い、つまり、透析導入後の予後が良好であることが挙げられます。
英国の医学雑誌「ランセット」による2016年の発表では、透析導入後の死亡率は、世界中で日本が最も低いと報告されています。また、「血液透析患者の治療方針と患者予後についての調査(DOPPS)」では、患者の活動状況の指標となる「FunctionalStatus(FS)」は、世界で日本が最も高いという報告も得られています。FSは、食事や入浴、排せつなどの「日常生活動作(ADL)」5項目と、電話の使用、買い物、食事の支度などの「手段的日常生活動作(IADL)」8項目の合計点数で決まり、点数が低いほど生活機能が低下しており、予後が悪いとされています。日本では満点である13点が半数以上(57%)を占めており、これは日本における透析導入後の予後が良好であることを示しています。
では、なぜ日本の透析医療の成績は諸外国と比較してよいのでしょうか。埼玉医科大学病院総合診療内科教授の中元秀友医師は、「理由はいくつか考えられる」と話します。
まず、末期腎不全患者の「適切な管理」と「計画的な透析導入」が挙げられます。日本では、患者で良好なシャントが作成され、計画的に透析が導入されます。