吹原:仕事をする上では、時間と労力がとても大事なのに。
田村:私はバブルの頃に、新入社員として証券会社に入社しました。勢いもあった業界でしたから、こういうタイプの先輩がたくさんいらっしゃったんですよ。こういうアホは、定量的でない基準でこちらを叱責するんですよ。例えば、「なんだ、その態度は!」とか「お前、ガッツがないないな!」とか。「飲みが足りない」なんて言われこともありました(笑)。
吹原:線引きが主観的で曖昧ですよね。
田村:時を経て、現在はシンガポールの企業で働いているのですが、最初は非常にびっくりしました。なにせ態度が悪いんです(笑)。机の上に足を乗せて上司と話したり、会議中でもガムをずっと噛んでいたり。でも、誰も文句を言いません。なぜなら、結果さえだせばいいからです。トウ(※登るにおおざと)小平が「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのがいい猫」と言いましたが、まさにその精神。結果がすべてです。
吹原:確かに、海外の映画には、熱血アホみたいなキャラクターはあまりいないんですよね。
田村:日本に比べて多様性のある外国の社会では、結局、結果が大事だと言うことでしょうね。
吹原:脚本を書くときに、アホの気持ちになって考えてみたんです。なんで、ムダに情熱を求めてくるんだろうって。そうしたら、切なくなりました。
田村:どうしてですか?
吹原:会社という場では仕事の結果がすべてなのに、その本質からずれたことばかりを小太郎に要求する。その理由は、自分の仕事に自信が持てないからだろうなと思ったんです。
田村:そのとおりだと思います。大事なのは結果。それにも関わらず、プロセスばかりを大事にするのは、その結果を出せないことの裏返しです。
■結果を出して熱血アホとの衝突を避ける
吹原:だから、熱血アホとの衝突を避ける方法として効果的なのは、自分にかかる情熱を別の方向に誘導することかなと感じました。でも、言うは易しで、その誘導先が難しいのも事実。だから、相手と付き合ってみて、興味が向きそうな方向を探すことも必要なのかとも思っています。