侵襲性歯周炎は一般的な歯周病と違い、歯周病菌の中でもたちの悪い菌が関与していることがわかっています。代表的な菌がアクチノバチラス・アクチノマイセテムコミタンス(A.a菌、以下)。患者さんの口の中からはこの菌が多く見つかることがわかっています。A.a菌は異物を排除して体を守ろうとする白血球の働きを低下させて、毒素を発生します。この菌は歯の表面ではなく、歯周ポケットの内部に入り込んで急速に増加するのが特徴です。このため、歯をどんなに磨いても、歯周病が進行してしまうのです。
A.a菌には家族間の感染が関与していることがわかっています。患者さんのお母さん、おばあちゃんにも同じ菌が見つかることが多いのです。もっとも、家族が侵襲性歯周炎を発症しているからといって、必ず感染するというわけではありません。
また、侵襲性歯周炎には効果的な治療法があることも知っておいてください。それは抗菌療法です。
テトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬などの抗菌剤で原因菌を死滅させる方法で、飲み薬として服用してもらう方法や、歯ぐきの中に投与する方法があります。
細菌検査をおこない、A.a菌が見つかった場合、あるいは重症度の高い歯周病の原因菌であるプロフィロモナス・ジンジバーリス(P.g菌)、トレポネーマ・ディンチコーラ(T.d菌)、タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f菌)などが見つかった場合が対象となります。
きちんと治療をすることで侵襲性歯周炎の進行が抑えられ、歯を失わずにすみます。ただし、抗菌剤には副作用もあるので、投与期間などいくつか守らなければならないことがあります。また、抗菌剤で100%原因菌が死滅するわけではありません。並行して、通常の歯周病治療やメインテナンスは継続していく必要があります。該当する患者さんは歯周病の専門医にかかることが望ましいでしょう。
○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演