多くの学校で新年度が始まった。期待通りのスタートを切れた人もいれば、「リスタートに失敗した」と感じている人もいるだろう。4月11日は18歳以下の自殺が、夏休み明けの9月1日に次いで多い日でもあるという。全国不登校新聞編集長の石井志昂さんが、やりきれない思いを抱えている人たちに、いま届けたい言葉とは。
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「新学期が来るのが怖い」と、先月会った10代の女子生徒は言っていました。
新年度はクラス替えや席替えがあったり、担任の先生が変わったり、スポーツテストがあったりと変化が大きいときです。自己紹介をするタイミングも多く、いきなり「いじられる」こともあります。悩みや不安というのは、希望や期待があるときにこそ高じるものなんだそうです。期待があったぶん裏切られたときの思いは、やりきれません。
そして、18歳以下の自殺者数が夏休み明けの9月1日に増えることはよく知られるようになりましたが、次に多いのは新年度が始まった後の4月11日、さらに次は4月8日です(「人口動態調査」から2015年までの過去42年間を日別集計)。春は危険なのです。
私自身は、中学2年生で不登校となり、これまで不登校、ひきこもりの取材を続けてきました。不登校やひきこもりの人のなかには、これまでの遅れを取り戻そうと、リスタートに賭けている人も少なくありません。それがうまくいった人もいますが、中には“失敗”した人もいます。その悔しい思いを聞くたびに、私は、なんて言っていいかわからない気持ちになり、ある人の言葉を思い出します。マジシャンのマギー司郎さんです。
10代の子ども若者編集部(不登校経験者)によるマギーさんへのインタビューに同行したのですが、僕の18年間の取材のなかでも印象深い取材の一つになっています。リスタートに失敗した人、その周囲にいる人に読んでもらえれば幸いです。
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僕は生まれつき左目が斜視でほとんど見えなかったんです。勉強もできなかったし、運動も全然。家も貧乏だったし、いつも端っこにいるような子だったんだよね。