演者側の労働組合をつくるという話も出ていますが、社会になかなか理解してもらえないのは、特に芸能っていう仕事は好きでやっている仕事なんですよね。もともと仕事はゼロで、売れてくると仕事ができる世界。仕事が無いってどういう意味かというと、仕事はあっても「お前じゃない」って言われて、自分にオファーが来ないってことです。だから「竹山これやって」って言われたら、やっぱり嬉しい。基本的にはみんな日雇いみたいなもので、自分が商品だし、商品を売れば収入になるんだから、できるだけ働きたいと考えるわけです。もちろん、いっぱい働きすぎちゃった人はちょっと休みたいってのはあるだろうし、事務所との意見の衝突はあるだろうけど、心の底では働けるだけ働きたいと思っている表方の人は多いと思いますよ。
一般社会と同じように、「この俳優さんは、歌い手さんは、お笑い芸人は一生懸命頑張っているのにお金を渡さないんですか!?」って言うことはできない面があるんです。だって「一生懸命歌ってるんだから、売れてる売れてないとか関係ない」ってなったら、芸能界は成り立たない。下積みもなく、給料制になったら、下剋上もないでしょうね。プロの演者、本当に面白い人、力のある人は出てこなくなるだろうと僕は思います。でも次の時代はそういうことになるんだろうか……。
いままで芸能人の労働問題っていくつか出てきましたけど、事務所もタレントも無名だってことがよくある。売れてる人は訴えてない。それは下積み時代のことだったりもするわけです。
僕はそのシステムは変えないほうがいいと個人的には思っています。きつい話ですが、売れる人と売れない人が出てくるのが資本主義だし、売れない人がいるから売れている人がいるという面もある。
あとは、みんな辞めなくなってきているから、売れない芸人の高齢化ももっと進むんでしょうね。平成の初めに僕らが30代でネタ番組に出始めたときは「30代でまだ若手芸人やってます」って言っていたけど、最近は売れない芸人が「もう40代ですよー」と言う時代。次は「55ですけど若手やってます」っていうのが出てくるんじゃないですかね。別の仕事をしながら、動画配信をやりながら芸人を続ける人もいるし。そういう意味の働き方もちょっと変わってくるのかなと思います。