■医師の給与にも男女で差
年収や勤務時間、さらには医学部の教員数においても男女差が存在していることが明らかになっています。
例えば、シカゴのSaunders氏らは、米国を代表する医師374人の調査の結果、女性内科医の年収中央値は20万ドルであり、男性内科医の25万ドルに比べて5万ドルほど低いことが示されことを2018年に報告しました。あらゆる専門分野においても、女性医師の方が男性医師に比べて年収が少ないことも確認されています。
米国のハーバード大学のLy氏らが、2000年1月から2015年12月までに結婚した米国の夫婦ともに医師である4934組を調査したところ、子どものいる女性医師は子どものいない女性医師より勤務時間が短い一方で、男性医師についてはそのような差は認められない、つまり、育児にかかわる時間に差があることがわかったのです。
さらに、米国ボストンのSege氏らは、2014年時点での米国の女性の医学部教員は3万464名であるのに対して男性は6万609名であり、また、女性の医学部教授は3623名(11.9%)であるのに対し、男性は1万7354名(28.6%)であったことを報告しました。米国の医学部で教員に任命されている医師の間では、学年度、経験、専門性、および研究の生産性を考慮してもなお、女性は男性よりも実質教授になる可能性がほとんどない現状があることが判明したのです。
私も医学生の時に、心臓外科の女性医師に対して「あの先生は、女を捨てているんだよ」と男性医師が言っているのを聞いたことがありました。医師として働いてからも、「女医なんだから…」と言われることは多々ありました。悔しいなと思っても声に発することが許されるような環境ではなく、あまり考えないようにしていました。
けれども、世界における「#MeToo」運動を目の当たりにし、性別にとらわれることなく仕事ができるようになるように、女性医師として声をあげていきたいと思っています。
◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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