さて、昨年は女性が受けた嫌がらせやセクシャルハラスメント、性的暴行の被害体験を告白・共有する運動「#MeToo」をきっかけにして、女性に対する様々なハラスメントや差別が世界で次々と明るみに出た年でもありました。

 昨年11月の半ばには、ダートマス大学の心理・脳科学の教授3人が痴漢、言葉の暴力、レイプに及んだとの訴えについての調査を受けて同大学を去るという事態が起こりました。米国ミシガン大学のJagsi氏らは、2014年のアンケート調査の結果、米国の女性の医学研究者1066名の30%が性的な嫌がらせの経験を有しており、66%が評価において性差別を受けたことがあることを報告しています。

 医学研究の分野でも、女性差別の実態が明らかとなっています。例えば、研究助成金や研究申請についてです。

■助成金申請や特許申請に男女差

 カナダのWitteman氏の2019年2月の報告によると、男性よりも女性が出願する方が研究助成金を得難いことがわかりました。これは、カナダ政府が提供する医療研究助成の交付申請において、2011年から2016年までの間に7093人の主任研究者から提出された2万3918件の助成金申請を分析したことから判明。提案された研究の質によるものではなく、補助金の資金調達における男女格差は、主任研究者としての女性の評価の低さによるものであると筆者は考察しています。

 また、米国のエール大学のJensen氏らは、米国の200万件を超える特許申請を調べたところ、男性に比べて女性からの申請の方が処理が遅くなり、却下率が高く、特許の範囲は狭く不利であることが示されたと2018年に報告しました。

 研究報告においても、興味深い報告があります。

 米国ダラスのBaylor Scott & White HealthのFilardoらが、1994年から2014年にかけて影響力のある一般医学雑誌(Annals of Internal Medicine, Archives of Internal Medicine, BMJ, JAMA, Lancet, New England Journal of Medicine)を調べたところ、女性の筆頭著者の割合は1994年の27%から2014年の37%と上昇したものの、近年横ばいになっており、いくつかの雑誌では減少していることがわかったことを、2016年に報告しています。女性の筆頭著者の割合は依然として低い実態があることがわかったのです。

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