リヨン戦の惨敗で、昌子は地元メディアに酷評される事態に陥ったが、チーム関係者は「ゲンだけが悪いのではない。試合中にはいい部分も沢山あった」と励ましてくれたという。アラン・カサノヴァ監督も依然として彼を守備陣の大黒柱と位置付けているようだ。トゥールーズというクラブがリヨンやパリ・サンジェルマンのような強豪とはかけ離れた規模のクラブで、国際経験の少ない若手中心のチーム構成で戦っていることもあるだろうが、182センチと小柄な日本人DFが高い評価を受けているのは事実。そこは日本サッカーの国際的地位向上と無関係ではなさそうだ。

 他の欧州諸国を見ても、ドイツで長谷部誠(フランクフルト)が「日本のベッケンバウアー」と評されるほどの輝きを放ち、吉田麻也(サウサンプトン)も世界最高峰のプレミアリーグで7シーズンも戦い続けている。彼らの活躍も日本人の価値を高め、フランス勢の追い風になっている部分も少なからずあるはずだ。

 ここから酒井と昌子が存在感をより高めていけば、彼らに続く日本人DFが同国に参入する可能性も少なくない。そういう流れが加速するように、彼らには残された今季終盤戦でしっかりとした結果を残してほしいものだ。(文・元川悦子)