こうした症状は花粉の飛ぶ季節にだけに現れることから、季節性アレルギー性鼻炎ともいいます。世界大百科事典によると、以前は枯草熱(こそうねつ:hay fever)といわれ、欧米で、サイロ(農産物や飼料を収蔵する容器や倉庫)に牧草を入れるときに鼻粘膜のかゆみと痛み,くしゃみ,鼻づまり,鼻汁,涙などの発作を起こすものを指したそうです。古くは古代ローマの時代から同様の記載があったとか。

■都内では推定有病率が約50%

 環境省の「花粉症環境保健マニュアル」(2014)によると、すでに約60種類もの植物の花粉アレルギーが報告されていますが、一般に、最も多いのはスギ花粉を原因とするスギ花粉症です。平成28年度に東京都が行なった「花粉症患者実態調査」によると、都内のスギ花粉症推定有病率(日常生活に支障がない軽症の方も含む)は48.8パーセント。年齢区分別に見たスギ花粉症推定有病率は、どの年齢層においても平成18年度の前回調査よりも上昇していたことが分かりました。飛散する花粉数の増加、母乳から人工栄養への切り替え、食生活を含む生活習慣の欧米化、腸内細菌の変化、大気汚染や喫煙などが花粉症の患者数増加に影響していると考えられています。

 しかしながら、花粉が体内に入ってきたからといってすぐに花粉症になるわけではありません。数年から数十年という年月をかけて花粉を浴び続けることで花粉に対する抗体が十分作られると、花粉が体内に入ってきたときに排除しようとアレルギー症状を引き起こすことになります。これが、花粉症の発症機序です。

■プールと花粉症との関連性

 ドイツの国立環境健康研究センターのKohlhammer氏らが、35歳から74歳の2606名の成人を対象に塩素プールの使用と花粉症発症の関連について調べた研究によると、学童期に水泳プールを毎年3~11回使用していた人は、使用していなかった人に比べて花粉症を発症する可能性が74%高かったといいます。また、過去12カ月間に水泳プールを毎週1回以上使用していた人は使用していない人に比べて花粉症を発症する可能性が32%高く、さらに生涯において水泳プールを使用した経験がある人は使用経験がない人に比べて花粉症を発症する可能性が65%高いこともわかりました。泳ぐ人の尿や汗、その他の有機物質が塩素処理された水と反応して放出される三塩化窒素が影響していると筆者らは考えています。

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