こういった何気ないしぐさや動作が、相手にとっては「話を聞いていない」という情報として伝わってしまうのです。そして、それが積もり積もった結果、「あなたはいつも人の話を聞かない」などと言われます。
つまり、話を聞いているかどうかというのは、相手の発声をちゃんと耳で聞き取っているか、あるいは、情報をしっかり理解しているかということとは違うレベルで判断されているのです。
これを改善するのは、実は簡単です。逆に「聞いている」というメッセージを送るように意識すればいいのです。そのためには、基本的なことではありますが、うなずきと相づちを、意図的に行うことです。
まずは「はい」「ええ」「そうですね」といった一般的な相づちを、しっかりとうなずきながら絶やさず行うようにします。
相手に同意できるときには「おっしゃるとおりです」「同感です」、知らない話を聞いたら「そうなんですか!」「知りませんでした」、興味のある話題には「それは面白いですね」「びっくりです」「さすがですね」などと、多少変化をつけて返すのがいいでしょう。
聞き手にとっては「少し多すぎるかな」というくらいの頻度でも、「ちょっと大げさかな」と思うような表現でも、話し手にとってはちょうどいいくらいだと思ってください。
そうすることによって、話し手は無意識のレベルで「聞いてもらえている」と感じ、安心して話し続けることができるのです。
私は以前、パートナーシップの世界的権威として知られる心理学者ジョン・グレイ博士から、相手の女性が怒っていたり、グチを言ってきたときに男性が女性にかけるべき適切な言葉というものを教えてもらったことがあります。
それは、「その話、もっと聞かせて」という相づちでした。
以来、私はずっとこの相づちを心がけています。グチをもっと聞かせて欲しい、なんて不自然じゃないかと思われるかもしれません。しかし、そのおかげか、私は現在まで女性とケンカになることはほとんどありませんでした。
あまりに疲れているときなど、さすがに話を聞けないと思うときは、相手にその理由を説明してわかってもらいますが、そうでなければ、相手の話には耳を傾けます。その際、こちらから余計なアドバイスなどはせず、ただ「聞いているよ」というメッセージだけを示します。
実際にはそれで十分なのです。相手は、ただ「話を聞いてもらいたい」だけなのですから。