<食事の準備ができた時に押せば、旦那と子供と犬に専用ルートで連絡できて便利?>

 つまり、「ごはんできたよー」代わりに、防犯ブザーを押して家族を呼び出すというわけだ。これには警視庁の担当者も「想定外」と驚きを見せる。

「いろいろな使い方を聞くと開発の参考になります。普段から使っていただくことで、本機能に慣れていただき、本当に必要なときの活動につながればと思います」(警視庁総務部広報課の担当者)

 ほかにもこんな機能がある。アプリ内の「痴漢撃退」を開くと、黒い背景に白色の文字で、<痴漢です 助けてください>と表示される。声を出すことなく、画面を見せるだけで周りに伝えられるようになっているのだ。さらに画面をタップすると、高めの女性の声で、<やめてください! やめてください! やめてください!>と、再びタップするまで繰り返される。なかなかの音量に一瞬ドキッとする。

 埼玉県が2016年に実施した調査では、痴漢被害者488人のうち292人が「何もできなかった」「我慢した」と回答。限られた地域の調査ではあるが、実際、高校生のころに電車で痴漢に遭ったという女性は「恐怖でいっぱいになり、何もできなかった」と言うほど、犯人に対して何らかのアクションを起こすのは想像以上に難しい。それだけに、こういったアプリ機能に期待が寄せられるのか。

 なお、アプリ画面には「痴漢です 助けてください」と表示されるが、音声では「やめてください」の一言を繰り返すのみ。画面表示と言葉は「あえて違うものを選んでいる」と前出の担当者は説明する。

「被害者の心情を考慮しました。また、音声では間違っていた場合のトラブル防止のため『痴漢』の言葉をいれないメッセージを選びました」(同上)

 他にも、最寄り警察署への最短ルートや近隣コンビニの情報などが分かるようにもなっている。「もしも」のときの駆け込み先を指南してくれる心強い味方というわけだ。

 スマホの片隅に忍ばせておくのはいかがだろうか。(AERA dot.編集部・福井しほ)

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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