また、KAPが空港内で孤立していた7800人の旅客を「3000人」と見積もったことがさらなる混乱を招く。バスによる脱出作戦は台数が圧倒的に足りず、数時間待ちになった。

 次第に空港内で働く従業員の統率も乱れていく。旅客にまぎれてバスに乗ったり、通勤用のマイカーの移動を規制しなかったりしたことから連絡橋で大渋滞が発生。旅客の中には、従業員が先に脱出していく姿を見て怒りの声が渦巻く。そうなるのも当然で、KAPは<当時数千人と言われた従業員の島内孤立にはまったく配慮せず>といった状態だったからだ。

 後でわかったことだと、3000人の見積もりは、空港スタッフがざっと見回して推定した人数がそのまま正式な人数になっていたという。文書には、外部有識者のコメントとして「3000という数字は、別件でもKAPがよく使う数字」と説明されている。

 現場の混乱をよそに、KAPの幹部は主導権争いを続けていた。

<当初、(KAPと航空会社の)事務方同士連絡していた事は順調に物事の調整が進んでいたのが、フランス人が表に出てくるようになり、急に何も進まなくなった。これにはエアライン担当者もあきれていた>(4日)

<KAPから国にまったく情報を上げていないからか、国はエアラインやその他事業者から直接情報収集をするようになる>(5日)

<バンシが「情報統制、情報統制」と唱えて一切の情報を外に出さず。この頃から、オリックス陣営とバンシ陣営との意見相違や対立がだんだん増えてくる>(5日)

 国内線は被災3日後の7日に再開されたが、KAPの混乱は続く。

<完全なモラルハザード状態。経営は情報管理を叫ぶだけで有効な対策とられず。社員もオリックスとバンシの仕切れなさや、内部もめを見て相当やる気を失せる状態>(11日)

 場外では意外な人物も登場する。

<官房長官補佐官の福田が、「オリックスは民間運営の代表企業として国と連携して復興を頑張っている」と言い始める。オリックスからの根回しか? そんな暇あったら復旧対応に力注げ>(14日)

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水道法で話題になった菅官房長官の懐刀も登場