山里亮太 (c)朝日新聞社
山里亮太 (c)朝日新聞社

 南海キャンディーズの山里亮太が、体調不良のため12月20日放送の『山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)を欠席した。2010年の放送開始以来、山里がこの番組を休むのは初めてのこと。代役として相方のしずちゃんがパーソナリティを務めた。山里は自身のツイッターで医師に虫垂炎と診断されたことを告白。12月18日放送の『たまむすび』(TBSラジオ)も欠席していたが、21日には自身のツイッターで復帰を報告した。

 2004年の『M-1グランプリ』で準優勝したことをきっかけに南海キャンディーズが世に出た当初は、山里よりも相方のしずちゃんの方が目立っていた。山里はその引き立て役に甘んじているようなところがあった。ところが、現在ではその立場はほぼ逆転していると言っていい。山里はテレビとラジオで数多くのレギュラー番組を持ち、第一線で活躍している。

 タレントとしての山里の特徴は、特定の分野に縛られず、幅広いジャンルの番組に出ているということ。そして、MC、サブMC、声だけの出演など、与えられる役割もそれぞれの番組で違うということだ。

 良く言えば、山里はどんな企画にも対応できる器用な芸人である。だが、悪く言えば、「便利屋」としていいように使われているということでもある。『アウト・デラックス』(フジテレビ系)で山里と共演しているマツコ・デラックスも、そんな彼の身を案じている者の1人だ。マツコは山里の現状について「各局から便利使いされている」と語り、山里を気安く起用するテレビマンにたびたび苦言を呈している。

 実のところ、山里と同世代でテレビタレントとして山里と同じくらい活躍している芸人は数えるほどしかいない。かつては「アイドルオタクのキモいキャラ」というイメージもあったが、現在ではそれもなく、ラジオやライブを通して着実に固定ファンを増やしている。単独公演のチケットは発売後すぐに完売してしまうし、7月に発売された著書『天才はあきらめた』(朝日文庫)は10万部超えのベストセラーになった。彼は間違いなく同世代の芸人の中で出世頭の1人なのである。

 それでも、山里にはそういう華やかなイメージがない。テレビでも企画に対して自分から合わせに行くような場面が目立つため、自分自身のキャラクターを強く出していない印象があるからだろう。実は、それ自体が本人の戦略でもあると思う。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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