下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)

柳園駅。中国の鉄道駅とは思えない小さな駅舎だ
柳園駅。中国の鉄道駅とは思えない小さな駅舎だ

 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第65回は中国の柳園駅から。

【中国の鉄道駅とは思えない小さな駅舎の柳園駅】

*  *  *

 何回ぐらいこの駅を通りすぎただろうか。中国の中心部から新疆ウイグル自治区に向かうときは、必ずこの駅を通る。

 柳園駅である。

 有名な敦煌の最寄り駅といったほうがいいかもしれない。一時、この駅は敦煌駅という表示があった気がする。「ここが敦煌か」と眺めた記憶がある。

 調べるとやはりそうだった。駅ははじめ、柳園駅として開業したが、2000年に敦煌駅に変わった。しかし2006年、敦煌まで線路がのび、敦煌駅ができた。その結果、再び柳園駅に戻った経緯があった。

 敦煌は世界遺産である莫高窟が有名である。写真で見たことがある。崖に掘られた洞窟のなかに仏像が安置されている仏教遺跡である。学術的には有名なのかもしれないが、新疆ウイグル自治区にも、同じような遺跡があり、さして興味が湧かなかった。

 むしろラクダに乗って砂漠を歩き、シルクロードの雰囲気を味わえることで一大観光地になった気がする。しかし敦煌には悪いが、シルクロードの面影を残すエリアは、新疆ウイグル自治区に行くと、次々にお目見えするから、とりたて敦煌……に食指も動かなかった。だからいつも通りすぎていたのだが。

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下川裕治

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下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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