これまで若手がホームグラウンドとしてきた「baseよしもと」や「5upよしもと」ではできるだけ多くの芸人を劇場に出して経験を積ませる。そして、テレビサイズのネタ時間を考えて、最若手だと出番の持ち時間が2分ということが多かったが、同劇場ではどんな若手でも最低5分は与える。長ければ10分という時間が与えられ、その時間をしゃべりきるための“足腰の強さ”が求められるシステムになっている。
この時間設定には、劇場のオープンと同時に立ち上げられ、吉本興業の若手漫才師が所属する上方漫才協会の中田カウス会長の意志が強く反映されているという。
「劇場運営の中で、カウス会長から唯一テクニカルな部分で言われたのが、持ち時間の話でした。『M-1』の決勝もネタ時間は4分。他の賞レースもほぼそれくらいのネタ時間。そこで勝てる漫才師を育てようと思ったら、本番よりも長い時間のネタを日ごろから作って、それを凝縮して4分にする方が絶対に濃くなると。なので、どんな若手でも劇場に出る以上、最低5分はネタをやるようにしています」(劇場担当者)
実際、最初ネタを始めた頃は「霜降り明星」も5分の時間を泳ぎ切ることがなかなか難しく、「2分のネタの寄せ集め的なもので、アップアップの状態だった」(同担当者)というが、この5分のトレーニングを積むことでネタの濃度と精度を上げてきたという。
実際「霜降り明星」が優勝した翌日、カウス会長に話を聞くと、冷静な分析とともに、今後へのエールの言葉を連ねた。
「せいやくんの持ち味が、かわいくて、いじりやすくて、打たれ強い。相方の粗品くんのツッコミが的確で、無駄ゼリフがない。短い言葉でボケを立てていく。これを5~6年のコンビ歴でやるのはなかなかできない。彼らは頭の良いところに加えての見えないところでの練習。せいやくんは上がり気味のところがあるけど、粗品がすぐに立て直す。ちょっとまごついている時はそれを見逃さずに突っ込んで、それも笑いにしていく。笑いに持っていくと、その間に、ふっと自信が戻るんです。軌道修正ができるんです。非常に良いツッコミをしているし、シャープです」
そして「霜降り明星」には鮮度があったという。