「果物でもね、“青い香り”というのがあるんですよ。熟した時にはもちろん良い香りがするんですけど、熟しきると次は傷んでいくニオイも混ざってくる。青い香りは、本当に一瞬しか出ないんですけど、実に心を揺さぶられるんです。子どもに何万もするおもちゃを買ってあげていても、今買ったばかりの100円のおもちゃがあったら、そっちで遊ぼうとするでしょ。これも鮮度なんです。これはその時にしかない魅力ですけど、本当に大きなことでもあるんです」
今後、「霜降り明星」には、漫才以外の仕事が確実に増えると予想する。
「今後は『漫才を忘れないこと』ですね。仕事の量で安心する。お金で安心する。ただ、それだけの仕事が何をきっかけで入ってきたのか。それは漫才なんです。漫才を作って、けいこして、お金を稼ぐのは本当にしんどい。食べて、飲んで、ああだこうだ言ってお金をもらう方が楽。ただ、それに自分らも慣れて、見る方も慣れたら『あれ、この人たち、何が面白かったんかなぁ…』となってしまう。それは『知っている』だけで『面白い』ではなくなってしまう」
最後にカウス会長は、こう忠告した。
「だから、どれだけ忙しくても自分たちから『劇場に出してください』とお願いする。そうしていかないと芸人というニオイがなくなっていくんです。漫才師は漫才をしているから漫才コンビであって、漫才をしてなかったら、ただのオッサン2人やからね。ただのオッサンの話は聞いてもらえません」
「M-1」という山を最も若く登り切った2人が、今後、どこまでも続く芸能界という山脈でどんな旅路を展開するのか。注目していきたい。(芸能記者・中西正男)