一方、企業側は、早期に内定を出しても、その後も学生を引き止めなければならない。特に、魅力に乏しい企業は非常に苦しくなる。

 つまり、企業、学生双方が長期間意味のない消耗戦を続けることになるのだ。そんな状態が何年か続けば、また、ルール復活という話が出るだろう。にもかかわらず、経団連は何故就活ルール廃止を叫ぶのだろうか。

■外国人労働者より外国人経営者を連れてくるべき

 経団連が就活ルール廃止にこだわる理由は、経団連企業が、最優秀層の学生を採用できなくなっていることにいら立っているからだろう。

 外資系や新興IT系の企業など、経団連の非会員企業が早期に採用活動をスタートし、優秀な学生を内定者として囲い込んでしまうのを見て、経団連のお偉方は、人材獲得のグローバル競争に勝てない最大の理由が現行の就活ルールだと思い込んでしまったようだ。

 しかし、これは、相当的外れな被害妄想だ。

 そもそも、就活ルールを廃止しても、経団連企業が優秀な人材を確保できるわけではない。経団連の大企業は、外資系企業に比べて生産性が低く、初任給もかなり安く設定している。しかも、最近は、各種の偽装・改ざんなど不祥事だらけで、長時間労働のイメージも広まっている。例えば、初任給だけで見ても、欧米だけでなく、最近は中国、韓国やシンガポールなど、アジア諸国でも初任給50万円という企業がゴロゴロある。引く手あまたの優秀な学生にしてみれば、日本企業の条件は全く魅力的ではなくなっている。

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さらに、日本の企業では…