■「改善成果が毎日わかるシステム」の誕生

 さらに、営業主導で一品である中層建物用手摺りの売上を伸ばしたことが、悟社長が以前から気になっていた連携不足の解消に本格的に着手することの必然性を高めていました。一品の売上をさらに伸ばすためには、工場の疲弊感や下請け的な仕事のやり方自体を変えていく必要が出てきたのです。こうした環境下での当事者(安本工場長)の出現は、悟社長にとっては渡りに船でした。

 悟社長はアルミックの工場が本来持っている力を発揮できずにいる原因に気づいていました。それは、目の前の与えられた作業が100%の仕事になってしまっていることでした。自分たちの作業を効率的にすることを考えるのではなく、区切られた納期に間に合わせる懸命さが全てだったのです。

 誰もさぼっているわけではないのにうまくいかないのは、効率的なやり方がわからないからだという結論にいたります。

 まずは、効率を考えていくために、徹底した2S活動(整理・整頓)だけに絞って改革を始めます。さらに、弱点補強のために取り入れたのが「ポイント生産方式」でした。これは、生産性を測る共通のモノサシ(ポイント)を用意して、生産に関わる人たちの目線を合わせつつ、ムリ・ムダ・ムラを徹底的に排除することで、生産性を上げる方法です。

 そこから2年で、時間あたりの生産能力を、多いときで10倍、平均値でも5倍の生産高となるまでに高めることに成功します。まずはやってみるところから始めたポイント生産方式は、「アルミック手摺工場の改善成果が毎日わかるシステム」へと発展していきます。工場の見学者を惹きつける目玉にもなる、オンリーワンのシステムとなったのです。「レベルゼロ」と問題をズバリ指摘してくれた金田先生が亡くなる直前の勉強会で、「改善がここまで進むとは思わなかった」と感心されるくらい、見事なスピード改善でした。

■「見える改善活動」から「魅せる工場」へ

 悟社長が実現した改革の中でも、特に工場の変化には目をみはるものがあります。悟社長と安本工場長の主導により、「見える改善活動から魅せる工場へ」を宣言した工場の生産部が、単に自分たちの生産性を上げただけでなく、営業部や管理部などの人たちが「自分たちも一丸になって頑張ってみよう」という気持ちになれる突破口を拓いてくれたからです。

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