昨日まで建築業とか水商売をやってたような人が、経験も無く、急に芸能事務所を始めたりする。そこでアイドル志望の子を集めて働かせて、給料を渡さなくなる。本人はそこが事務所だと思って信頼しているし、偉い人が「辞めるなら100万円払え」って脅したりすると、そういうことに慣れてない若い子たちは怖くて何も言えなくなってしまうわけです。
業界の先輩として断言します。脅されたら訴えなさい! そういうことをやってるやつに、芸能界で力を持った人はいないんだから。
そもそも、もしその事務所が君にすごく夢中になって頑張ってくれているなら、活動期間中に芸能界の偉い人にそこそこ会ってるはずなんです。できるマネージャーなら「あの人のところに挨拶に行くぞ」って、有名なプロダクションの社長やイベンターや、テレビ局のプロデューサーのところに連れて行って、絶対顔を見せている。それがちゃんとパイプがあるってことだし、君たちに一生懸命やっているっていう証拠。
そういうこともないまま、お金がもらえなかったり、罰金とか自腹で買取りさせられたり、辞めたいって伝えたときに「金払え。世間に言うぞ」って恫喝したりするのはマトモな事務所じゃない。「どんどん言え」と言って構わないと思うんですよね。どの事務所を選ぶか、どの大人の言葉を信じるか。付き合う人を選ぶ力も芸能界でやっていく才能の一つだと僕は思います。
でも、難しいのは誰しも「夢を持ちなさい」「頑張れば叶うよ」って教育されていることです。僕が芸能界を目指したのもそう。それは良いことだと思うんだけど、長年やってきてわかったことは、芸能界では頑張っても夢は叶わないってこと。人気商売と呼ばれるこの業界で、努力と“売れる売れない”は別問題。運や人との出会いも影響するし、外見で差別もされる。オーディションでは大人たちが「あんたは要る、要らない」ってイエスかノーで判断する。だから夢は叶うと信じている子たちは諦められなくて、結局、わけのわからない大人たちがやってる事務所に入るか、自分たちで立ち上げるか、ということになるわけです。