日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「性感染症の検査」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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「性感染症の検査、受けたことはないです…」
これは、同世代の女性からよく聞かれる回答です。私は、緊急避妊薬の処方を希望してクリニックを受診しにやって来る女性に、性感染症の検査をしたことがあるかを聞くようにしています。緊急避妊薬を希望するということは、避妊に失敗した、または避妊していなかった(具体的には、避妊具が外れた・破れた、または使用していなかった)ということ。検査を受けたことがない、または知らない女性には、性感染症に感染するリスクがあることはもちろん、性感染症とはなんぞや、というところから、検査の必要性についてお伝えするようにしています。
最近、日本で梅毒の感染者が昨年より急増している、という報告やニュースを聞いた人も多いかもしれません。ですが、梅毒だけが性感染症ではありません。日本で最も感染者数の多い性感染症は、クラミジア感染症の約2万5000人。次いで、性器ヘルペスの約9千300人、淋菌感染症の約8千100人と続きます。しかしながら、これは氷山の一角にすぎません。性感染症は症状を自覚しにくく、病院を受診していないケースが多いと考えられるからです。今回は、性感染症についてお話したいと思います。
性感染症とは、細菌・ウイルス・寄生虫が性交渉によって媒介されることで感染する疾患です。病原菌の種類は30種類にも及びますが、その中で、クラミジア、淋病、梅毒、膣トリコモナス、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎の8つが主な原因と言われています。
これらの性感染症は、抗生物質を内服することで治療することができます。どちらか一方のみの治療では、性交渉により再び感染してしまうため、パートナーと共に治療することが重要です。けれども、パートナーに感染したことを打ち明けられず、感染を繰り返してしまうケースが後を絶たないのが現状です。