日大ショック、東洋躍進 「大学選び」いま進学したいのは?

週刊朝日

東洋大白山キャンパス (c)朝日新聞社

 併願した大学・学部にどちらも合格(W合格)した場合、どちらを入学先に選ぶか──。大手予備校・東進ハイスクールのデータを元に注目の併願パターンを徹底比較した。今や、ブランドや偏差値(難易度)だけに頼らなくなった大学選び。W合格のデータから、何が見えてくるのか。

【図表】W合格者はどっちを選ぶ?併願パターン別・入学比率などのデータはこちら

■SMART+GCH 新しいグループが定着?

 早慶に次ぐ私大グループといえば、長らくMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)や学習院を加えたGMARCHが定着していた。ところが、現状はSMART+GCHという新しいグループに変わりつつあるのだ。W合格のデータからもその構図が読み取れる。

 SMARTは上智(英名:Sophia University)、明治、青山学院、立教、東京理科の頭文字をとったもの。予備校関係者への取材や進学校の合格実績をもとに本誌(1月4-11日合併号)でも新潮流として紹介した。これに続くのがGCHで学習院、中央、法政。

 W合格で受験生の選択を見てみよう。上智・東京理科と明治・青山学院・立教のW合格を見ると、上智・東京理科の入学比率が高いが、明治・青山学院・立教と学習院・法政・中央とのW合格を見ると、明治・青山学院・立教のほうが高い傾向にある。これらのデータが物語るのは、受験生はGMARCHを一括りとする意識が薄れ、SMART+GCHというグループ分けでとらえるようになってきたということだろう。

 新しいグループ内でW合格のデータを比較してみると、勢いがあるのが明治だ。立教や青山学院との併願では入学比率は総じて明治のほうが高い。かつてはバンカラのイメージもあったが、女子学生の割合が増え、マンモス大ながら、就職の面倒見がいいと高校教員からも評判だ。また、情報コミュニケーション、国際日本など社会のニーズに合わせた新学部を設置。東進ハイスクールを運営するナガセの市村秀二・広報部長はこう語る。

「政経、法、商という看板学部に加え、新設学部も人気をけん引している。地道に力をつけてきた。きわめてまれだが、早稲田とのW合格で明治を選ぶ受験生も出ているのは明治だからこそ。今後もデータサイエンスや建築系の学部新設が計画されており、人気を集めそうです」

■日大ショック、東洋の躍進 日東駒専の明暗

 MARCHに次ぐグループだった日東駒専(日本、東洋、駒澤、専修)。入学比率を見るとそのくくりに変化が起きているとわかる。

 これまで、志願者数などから最も人気が高かったのは日大だ。しかし、今年のW合格のデータをみると、東洋・経済と日本・経済では80%が東洋を選択。東洋・経営と日本・商でも同様に80%が東洋だった。学部全体のW合格の状況をまとめると、53%が東洋を選んでいた。

 背景にあるのは、日大の不祥事。昨年5月に、アメリカンフットボールの試合で、日大の選手が危険なタックルをした。その動画がインターネットで拡散し、炎上。その後、選手自ら記者会見を開き、詫びた上で、タックルは監督、コーチの指示だったと告白した。監督らは指示を否定したが、世間からは大学側に強い批判の目が向けられた。


 そんな問題があって迎えた今年の入試では、日大の志願者数は前年より約1万4千人減の10万1千人と、大幅に減少。安全志向から受験生が併願校を増やすなかで、東洋、駒澤、専修は志願者数が増えたのとは対照的な結果だった。悪質タックル問題の影響は、W合格のデータにも表れたとみられる。

 今後の動向について市村広報部長はこう見る。

「日大の対応を見て、大学の体制に不安を覚えた受験生や保護者もいたのでは。ただ、この状況がこのまま続くとは思えない。日大と東洋が人気を競い合う時代になるでしょう」

 志願者数で日大と明暗を分けた東洋大。他のW合格のデータからも躍進が見てとれる。日東駒専よりも格上とされた大学のグループ「成成明学獨國武」(成蹊、成城、明治学院、獨協、國學院、武蔵)とのW合格のデータを見てみよう。

 東洋・法と獨協・経済のW合格は、67%が東洋に、東洋・経営と獨協・経済では、83%が東洋を選んでいる。表にはないが、成城と東洋で学部全体のW合格を見ると、13%が東洋に、明治学院と東洋の場合には4%が東洋に進学。

「東洋大は改革がうまくいき、今年、志願者数が全国で2位になった。その躍進は本物。これからも伸びていくでしょう」(市村広報部長)

 日大も成蹊、成城、明治学院に対し、10%前後の入学比率になっている。最近では、現状に即した新しい分け方として「成成明東日」(成蹊、成城、明治学院、東洋、日本)というグループも注目されている。

「W合格データから、日東駒専の人気は日東と駒専で分かれたとみられます。日東が上のグループに食い込みつつあるのは間違いない」(同)

■関関同立を近大が猛追 存在感を増す甲南

 関西私大といえば、関関同立がトップグループで産近甲龍(京都産業、近畿、甲南、龍谷)が続くという構図が長らく続いてきた。ただ、関西でも大学間の競争が激しくなっており、その図式に変化が訪れるかもしれない。

 注目大学のW合格のデータをみていこう。まずは、近畿大。かつては産近甲龍の中でもそれほど人気が高かったわけではないが、世界初の完全養殖「近大マグロ」をPRし、全国区に知名度を上げた。今では毎年、多数の志願者を集める。

 龍谷・経営と近畿・経営を比べると71%が近畿を選択。産近甲龍グループでのW合格では、入学比率が同じか近畿が上回っている学部が目立つ。

 関関立とのW合格でも、近畿を選ぶケースもあった。近畿・建築と関西・環境都市工、近畿・農と立命館・生命科学のW合格で近畿を選んでいる合格者がいた。

 近畿・建築は11年に建築学科を再編した学部で、建築を冠した学部は日本初。理系なので学生は男性の割合が多かったが、建築デザインの専攻を設けた結果、今春の女性の入学比率は34%に上った。近畿・農は「近大マグロ」を誕生させた学部で、研究力に定評がある。入学センターの担当者はこう見る。

「この二つの学部は近大の改革と伝統を象徴するような学部。学びや研究実績から選択されたのでしょう。従来の大学のグループ分けを元に大学を選択する時代が徐々に遠のいてきているように感じます」

 中規模大学ながら、存在感を発揮しているのが甲南大だ。数は少ないものの、甲南・経済と関西学院・法で甲南大を、甲南・経済と関西・商で甲南大を選んだ受験生がいた。

 甲南大の学長補佐で、経済学部の高龍秀教授は「4年間でしっかりと成長できる環境を整えていることが要因の一つ」と見る。甲南大は、関関同立・産近甲龍の中で学生数が1万人を唯一切る9千人。中規模の大学だ。ゼミ形式の授業が多く、細やかな指導を売りにしている。

 経済学部で特に人気があるのが、半期科目の「プロジェクトゼミ」。同大のOBには一線で活躍する経営者が多く、講師として招いている。授業では講師から経営にかかわる具体的な課題が提示され、学生は解決策を考える。最終的には高校生や学校教師が参加できる公開の場で発表を行う。

 これまで講師には、サンスターの濱田和生会長、象印マホービンの市川典男社長などが参加。学生からは評判も高い。高教授はこう見る。

「この授業を取りたくて、入学してくる学生もいます。偏差値という土俵で勝負していこうとは考えていません。中規模の利点を生かした成長できる大学として選ばれていきたい」

 最後に、国公立大と私大のW合格について分析しよう。昨今の経済状況や地元志向の高まりを受けて、私大よりも国公立大を選択する傾向は変わらない。授業料が私大と比較して安く、地元就職にも強いためだ。

 W合格で私大を選択しているケースも少なくない。私大でも国公立大に匹敵するような研究分野があり、就職でも私大ならではの強みもある。また、最近では、地方の優秀な学生を獲得するために私大は奨学金制度を充実させているので、条件が整えば十分選択肢になりうる。


 かつてのように偏差値やブランド力など一つの物差しで大学を選ぶ時代ではなくなった。W合格の入学比率は、一部の受験者の選択に基づくあくまで参考情報の一つに過ぎない。大学選びでますます重要になってくるのは、自分が将来何をしたいのか、そのために大学ではどういった学びをするかということだ。多様化する大学の特徴をしっかり見極め、後悔しない選択をしてほしい。(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日  2019年11月29日号

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