――新しい思い出でアップデートを重ねてきた中川さんが、この春、不登校を経験した方などを対象にしたイベント「中川翔子と卒業式をもう一度」を開きます。なぜこうしたイベントを開こうと考えたのですか。
中川 私は中学のとき、卒業式に出られませんでした。「なんてことをしてしまったんだ」という当時の気持ちは、今も心のどこかに残っています。そんなモヤモヤがずっとあったので、以前、「卒業式をやり直したい人いますか?」ってX(旧ツイッター)で聞いてみたことがあったんです。そこでいろいろな人の意見を聞いていたら、「やり直す」のではなく、「もう一度」なのかもしれないと感じて。あのときの同じメンバーで、あのときに戻って卒業式を「やり直す」ことはできないけれども、同じように悩んだ経験がある人、傷をもっている人、いろんな人たちが新しく出会って、「もう一度」卒業式をすることができたら、過去に区切りをつけて、前に進むきっかけになるかもしれないと思いました。
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――今回、卒業式に関するアンケートを取りました。15〜50歳の不登校当事者82人に調査したところ、「中学の卒業式に出席した」という人は65%、そのうち「嫌な気持ちが残った」という人が半数以上いました。逆に、「いい思い出になった」という人は、「フリースクールで卒業式をやってくれた」「特別支援学級の人たちだけでやった」と答えています。やはり、自分の居場所で区切りをつけることが重要なのだと思います。
中川 私が通っていた通信制高校では本校と分校の両校で卒業式がありました。2校分、2枚の卒業証書をもらえたから、中学のときに直接もらえなかった卒業証書をもらえた記憶が上書きされたようで、2倍うれしかったんです。高校に通う前は「もう大学も行けないだろうし、思い描くキラキラした学生生活も送れない」と思い込んでいたのですが、そんなことは全然なくて。やりたいことを見つけて大学に推薦で行った子もたくさんいたし、部活はやれなかったけれど、年を重ねるたびに夢がかなっていき、未来への希望をもてるようになりました。不登校で後れを取った分は、いくらでもカバーできるから大丈夫! 「青春はあとから取り返せる」 って、大人になった今、すごく思います。
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