学校の水泳授業の民間委託が進んでいます。大阪の公立小学校の現役教師・松下隼司先生は、「小学校の水泳の授業は民間に委託すべき」と言います。松下先生が考える、水泳授業で改善すべき点とは?

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「子どもの安全」のためにしている水泳指導

 大阪の公立小学校で教師をしている松下隼司と申します。今年で教師になって23年目です。小学校の水泳の授業は、紫外線に対する意識や水着の形など、たくさん変化があります。一方で、「子どもの安全」を守るため、変わらずに続けている指導があります。

 例えば、水泳の授業の前後に行っている“ラップタオルを体に巻いたまま歩かせない”指導です。

 子どもたちは、水泳の授業が始まる前、水着に着替えたらラップタオルを体に巻いてプールに行きたがります。水泳の授業が終わったら、ラップタオルを巻いて、更衣室に行きたがります。

 理由は、(1)できるだけ水着姿を見られたくないから、(2)寒いから、(3)水滴を床に落としたくないから、などです。でも、ラップタオルを体に巻いたまま歩くと、転んだときにとても危険です。

 ラップタオルを巻いた姿は、てるてる坊主に似ています。顔と頭だけが見える状態です。転んだときに、すぐに手をつけずに顔や頭を怪我をする恐れがあります。特に、階段の上り下りの転倒は怖いです。子どもは大人より転びやすいですし、危機意識も低いものです。だからこそ、教師の注意が必要です。

 また、子どもの転倒を防ぐため、水泳の授業が終わった後の“タオルで体を拭いているかのチェック”も大切です。シャワーを浴びたままだと、ぽたぽたと体から水滴が落ちます。しっかりと体を拭かないで更衣室まで歩くと、途中の階段や廊下が水で濡れてしまいます。そうすると、ツルっと滑ってころんでしまい、怪我をしてしまう子どもが出ます。

 だから、プールの出入口のドアで1~2人の教師が、門番のようにチェックをします。

「合格! 行っていいよ」「あかん! もっと、ちゃんと拭いて」「背中、全然、拭けてないやん」と、次々と合否を出していきます。

 子どもたちも、「やったー! 一発合格や~♪」「なんで、あかんの~。ちゃんと拭いているやん」「バレたか~」など言って楽しそうです。

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松下隼司
松下隼司

1978年生まれ。奈良教育大学卒業。大阪の公立小学校に勤める現役教師。2児の父親。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。令和6年版教科書編集委員を務める。著書に絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)、『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(フォーラムA企画)などがある。教師向けの情報サイト「みんなの教育技術」で連載を持つほか、Voicy「しくじり先生の『今日の失敗』」でパーソナリティーを務める。

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