このハンデも、15 歳まで待てば成長の差が埋まってきます。小学校では体の小さかった子が中学で急激に成長し、言動も大人びていくのを目の当たりにしたことのある人も多いのではないでしょうか。

 高校受験のトップ校・都立国立高校の2023年度新入生161人の誕生月を独自で調べたところ、4~6月生まれが27 人、7~9月生まれが53 人、10~12 月生まれが35 人、1~3月生まれが46 人と、受験で不利と言われる早生まれの割合が高いという結果になりました。

 早熟タイプの秀才が中学受験で抜け、晩熟タイプが相対的に有利になった可能性を示す興味深いデータです。

一番怖いのは自己肯定感の破壊

  のんびりした晩熟タイプが中学受験を経験すると、努力が結果につながらず、学習への意欲を失う恐れがあります。それだけでなく、〝自己肯定感〟というポジティブに生きていくための感情までもが破壊されてしまうことがあります

 自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れ、自分は価値のある人間だと感じることができる心の状態」のことです。自己肯定感が下がれば、不登校やうつ病、自殺につながることもあります。日本人は、外国人に比べて自己肯定感が著しく低いという研究結果もあります。教育熱の高いエリアの進学塾には、早い段階で「偏差値」や「点数」「クラス」を意識させられ、長期間、劣等感を抱く環境にいたことによって自己肯定感が低下してしまった子どもたちもいます。

 これは、ある小学6年生の男の子の話です。

 母親に連れられて高校受験コースにやって来ました。偏差値は45 。塾からは習い事の野球も辞めるよう迫られ、中学受験をやめるかどうかの相談に来たのです。入塾面談の際、彼は終始うつむいていました。ある日、彼と一対一で話をしました。叱るわけでもないのに、彼は涙をこぼし、「僕はバカなんです」と絞り出すような声で言うのです。彼の自尊感情はボロボロでした。彼は決して勉強ができないわけではありませんでした。中学受験の日能研・四谷大塚での偏差値は45 、高校受験だと「中の上」です。つまり、高校受験組に回った瞬間、彼はどちらかというと勉強ができる人、という扱いを受けるわけです。たしかに精神的に幼いところがあり、勉強姿勢にも甘さが見られました。こういう子は、競争の世界からは距離を置いて、じっくりゆっくり育てると伸びます。中学受験をやめる選択をしたあとは、大好きな野球を小学校卒業まで続けることができました。

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