競争適性の低い子が中学受験に「参戦」してしまうとどうなるのでしょうか。

 「うちの子どもが受験ストレスで嘔吐してしまって」「子どもが円形脱毛症になってしまいました」「うちの子はアトピーが悪化して、かきむしって困っています」

 これらはすべて、実際の保護者の会話です。さらに、NHKの番組『ニュースウオッチ9』でも、東京の心療内科に、中学受験のストレスで心身に不調が出た小学生の受診が相次いでいるという報道がありました。軽い気持ちで始めた受験でこんなことになるとは……と後悔する保護者の姿がそこにあったのです。

 そうはいっても、現代は「競争社会」です。子どもに早いうちから競争に慣れさせたほうが良いという考えを持っている親御さんもいるでしょう。

 しかし、焦らなくても、競争適性は子どもたちが日常を生きているだけで少しずつ身についていくものです。クラスメイトの前での発表、運動会の本番、班長への選出、習い事のコンクールや発表会、部活動の試合。読者のみなさんも小中学生のころ、「あのときは緊張で足が震えた」という経験を何度も重ねてきたはずです。これらの経験が、子どもたちに年齢相応のプレッシャーを与え、彼らを強くしていきます。

高校受験は「競争適性のない子」にも配慮された制度

 中学受験をやめた場合、子どもは高校受験をすることになりますが、高校受験は、競争適性の低い子にも選択肢のあるシステムになっています。たとえば、どの学校からも合格通知を得られない子がいないよう、少なくとも1校から合格を得られるように併願優遇(併願確約)という制度が存在します。だれもが一度は「合格」という成功体験を得られるようになっているのです。一発勝負の緊張感に耐えられない子への対策として、持続的な努力を評価する単願・推薦入試なども設けられています。高校受験は、競争適性のない子にも配慮された制度設計がなされています。

 競争心の低い子でも学びへの意欲は高く、勉強が得意であるケースも少なくありません。小中学生を見てきた塾講師としての経験から、こういうタイプの子は、競争心をあおるよりも、学問的な楽しさをたっぷり味わい、学習の成果を他人との比較などに求めないほうが、高いパフォーマンスを発揮することができるでしょう。

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東京高校受験主義(東田高志)

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東京高校受験主義(東田高志)
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Xで4万5000フォロワーのいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20年のキャリアを持つ塾講師。長年、学校と塾の変化を見続け、小・中学生を教えてきた。おもに首都圏を中心とした教育ウォッチャーでもある。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問し、区議会議員とのコラボイベントも開催している。

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