近年、全国で設立が相次ぐ「公立中高一貫校」。首都圏では志願者の減少傾向はあるものの、入試は4~5倍と高倍率のところが中心で、厳しい受験が続いています。Xで「東京高校受験主義」として受験情報を発信する高校受験塾講師・東田高志さんは、公立中高一貫校の適性検査対策は「積み重ねた努力が点数に直接反映される試験ではない」と言います。『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)から、お届けします。
【図】都立中高一貫校の合格のために必要な要素は?必要な要素は「学習総量×早熟度」
公立中高一貫校は、入学者選抜に際して、受験競争の低年齢化を招く学力検査を課さないというルールがあります。それに代わるものとして実施されているのが「適性検査」です。この適性検査が「魔物」なのです。適性検査では理科と算数を組み合わせたりする科目横断型の問題が出題されます。一問一答形式の知識を問うものではなく、知識の運用力、思考力、正確な読解力、表現力を評価します。暗記やパターン問題演習ではとても対処できません。
都立中高一貫校の合格に必要な要素を、簡略化した図で表してみました。各都道府県の適性検査の出題傾向や要求学力水準に違いはありますが、都市部の進学校化した公立中高一貫校は、おおむね共通しているでしょう。
横軸は、合格に至るまでに必要な「学習総量」です。縦軸は、生まれ持って定められた成長曲線である「早熟度」です。自然な成長の速さを示すため、努力だけで変えられません。
私立中学受験では、「学習総量」の負荷が極端に大きく、なおかつ、高い「早熟度」が求められます。高校受験は、15 歳まで待てば、晩熟タイプの子どもも成長が追いつくため、「早熟度」が受験に与える影響は小さくなります。難関高校を目指すと「学習総量」は多くなりますが、中学校の授業がベースなので、学習負担感は中学受験ほど大きくありません。小学校から学習をコツコツ積み重ねることによって、受験の負担感を減らすことが可能です。そういう意味で、高校受験は「努力の受験」です。都立中高一貫校は、どちらのタイプにも当てはまりません。合格までに必要な「学習総量」は、難関高校受験や私立中学受験よりも少なくて済みます。一方で、高度な知識の運用力、思考力、記述力が試されるという点で、「早熟度」は上位私立中学受験と同等の水準が要求されます。
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