安浪:なるほど。まずは肯定してあげないと、聞く耳を持たないですもんね。

矢萩:はい。とはいえ掃除をやり出すと永遠に終わらないから、とりあえず時間を区切って何時から何時まで掃除の時間にしよう、と決めて一緒にやってあげる。そしてその時間になったら切り替えてルーティンの勉強でもいいので、何かしらスタートさせるのがいいと思います。人間が集中するためにはまずは小さくやり始めてみるのがいい、というのは脳科学的にも言われていることです。3分でいいからやってみよう、と言ってやり始めてしまえば、3分じゃ終わらなくて10分、20分になるわけなので。

■やり始めるためにいい勉強とは

安浪:やり始めるためにいい勉強は二つあると思っています。一つは先ほども言った小さなルーティンの勉強。ちょっとした暗記の確認でもいい。とはいえ、この状態の子が一人で取り組むのはハードルが高いから、親も一緒にやってあげるとよりいいと思います。あともう1つは過去問ですね。過去問はよーいドン!でスタートできるし、制限時間があるので終わりが見えます。ただ、気が入っていないと雑になる可能性もあるので、志望順位が比較的低い学校の過去問の1教科だけやってみる、というところから始めるのも一つの手だと思いますね。

矢萩:そうですね。どんな小さなことでもやれば成長があるわけですから、まずはそこを認めてあげてほしいです。

安浪:親が焦っても、受験するのは本人です。親御さんの気持ちはすごくわかるんですけれど、その焦りやイライラを子どもにぶつけてもいいことはあまりないです。この質問者さんは関東にお住まいでしょうか?関東の子たちにとって、入試直前期って冬休みが終わってからなので、入試はまだ他人事の子も多いですね。関西は入試が早いから、冬期講習から塾がガンガンにアクセル踏んできますけど。

矢萩:あとは親子でマインドというか、合意形成がちゃんとできているか、どこかで目的がずれていないか、ちゃんと確認したほうがいいです。絶対にこの学校に合格したい、っていうのがあるのであれば、あと何日しかない、っていうのは現実としてあるわけじゃないですか。だったら何かしらの手は打たなければいけない。でも、うちの塾もそうなんですが、受験は合格が目的でなく、成長することが最優先です、っていうことを明確に合意しているのであれば、そんなに焦らなくても今やっていることがちゃんと成長につながっていることを家族で確認しながら進んでいけばいいと思います。受験を成長するための一つのイニシエーション(通過儀礼)として捉えればそんなに焦ることはない。

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