特徴的な授業のひとつが1、2年で行う「探究科」だ。1年次の6月からグループに分かれ、教員の示したテーマをゼミ形式で探究する。今年のテーマは「信号のない横断歩道問題」「直感を検証、考察してみよう」など、身近な問題に「問い」を持ち、探究する方法を身につける。1年次の12月からは自分の決めたテーマを探究する。冒頭の中平さんは「色彩計画を利用し、さまざまな建物に合う色を考える」、腰原さんは「過疎化した村を盛り上げよう!」というテーマで1年間の探究活動を行った。

 もうひとつの特徴ある授業が「生命科」だ。1年次は友だち関係や将来観、2年次は共生社会や命の尊厳、3年次は平和など、決まった答えのない問題についてもディスカッションを通して考えを深める。教科の授業もユニークだ。教科横断型授業が頻繁に行われ、国語科と英語科の先生がコラボレーションして文法の違いを学んだり、数学科と美術科のコラボで相似の知識から黄金比を求めたりするなど、複数要素の知識が結びついていく楽しさを学ぶという。

 同校では宿題が出ないため、生徒は家庭学習を自ら計画し、学ぶ力をつける。3年次になると習熟度別に10人程度のグループに分かれ、放課後や長期休みの講習で受験対策を行う。クラブ活動も盛んで、小規模校ながらダンス部は全国大会で15回優勝、陸上競技部も全国大会の常連、体操競技部もかつては全国大会で活躍し、OGには2020東京五輪銅メダリストで昨年引退した村上茉愛選手がいる。

 一方、自閉症児のクラスには独自の授業があり、中学校卒業後は高等専修学校に進学し、将来の社会自立を目指していく。学校で経験の幅を広げ、きめ細かく自立のためのさまざまなスキルを身につけている。

「自閉症児は個性に幅があり、個々に秘めた力がある。自立に向かう中学校時期には、得意なことを伸ばすとともに、不得意なことにも根気よく取り組める力をつけていきます。活気ある集団活動や行事での取り組みから、内に秘めた力が出てくるのも思春期ならでは。健常児の生徒もそんな自閉症児の姿を見て、学ぶことが多い。努力することを軽んじる生徒はいません」(菊地校長)

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