校内のところどころに自閉症児クラスの生徒の作品が飾ってある。色彩豊かで独創的な絵画、根気よく丁寧に仕上げた手芸作品など力作が並ぶ。

「健常児クラスの生徒が作品を見て、『すごい』と評価する。それが自閉症児クラスの生徒たちの喜びや自信となり、自己肯定感に繋がっています」(岩本教諭)

■修学旅行は宿泊も同室

 行事では、ともに活動する機会が多くなる。多くのイベントの企画、運営が生徒に任されている同校では、スポーツ大会などの競技も自分たちで考える。ムカデ競走やペア縄跳びなどの競技が取り入れられていて、大会間近になると、あちらこちらで一緒に縄跳びの練習をする姿が見られるという。

 幼稚園から高等専修学校まで、息子が武蔵野東学園の自閉症児クラスに通った卒業生保護者のAさんは、「自閉症児に対しての、まわりの生徒たちの理解がありがたかった。年上の生徒がよく声をかけてくれました」と振り返る。

「自閉症といっても障害の程度はいろいろですが、うちの子は比較的運動を得意としていました。スポーツ大会の競技に馬跳びがあったのですが、健常児の生徒が馬になって、うちの子がその上を跳んだんです。息子が何が得意かを考えて、主役にしてくれたんだと思います」

 夏休み前の7月のある日、9月に行われる京都奈良修学旅行の事前学習では、3年生の生徒全員が体育館に集まっていた。先生による説明の後、クラスから班ごとに分かれるとき、健常児クラスの生徒は、自閉症児クラスの生徒に声をかけうまく自班に誘導していた。修学旅行では健常児と自閉症児がグループになり、宿泊も同室だ。

「宿泊行事の前には、旅行先でグループになる生徒同士が一緒になる活動を設けて、お互いの理解を深めます。日常的に接しているうちに、健常児の生徒は、自閉症児のできることや個性を引き出すのが上手になりましたね。言葉が少ない生徒には、絵を描いてみようかと誘ったり、一緒に歌を口ずさんだりする姿が見られます」(菊地校長)

NEXT自閉症児の母親の「最後の頼みの綱」だった
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