■アメリカにも姉妹校開設

 武蔵野東学園は、北原勝平、キヨ夫妻が1965年に幼稚園を創立したことから始まる。間もなくして、ある自閉症児の母親が「子どもを入れてほしい」と訪ねてきた。他の園から断られ、武蔵野東幼稚園が最後の頼みの綱だった。キヨは快諾し、やがて「生活療法」という自閉症児の教育方法論を確立する。

「生活療法では、基本的な挨拶やマナー、時間を守るなど、社会生活に必要なことを学びます。一人ひとりの個性を引き出しながら課題を克服していきます。健常児の生徒と一緒に過ごすことは、社会に出てからの付き合い方を学ぶうえで有効です。行事、校外学習を通じて、やっていけるという自信に繋げます」(岩本教諭)

 当時在園していた保護者たちからの「上級学校をつくってほしい」という願いを受けて、77年に小学校を、83年に中学校、86年に高等専修学校を開校し、健常児と自閉症児の混合教育を実践。さらに自閉症児の療養プログラムを実施する、武蔵野東教育センターが設けられた。自閉症児教育の評判は海外にも広がり、「米国にも生活療法の教育プログラムを実施する学校をつくってほしい」というアメリカの保護者の強い願いに応じ、87年に姉妹校としてボストン東スクールが開設された。

■卒業生には五輪メダリストも

 ほとんどの私立学校が中高6年の一貫教育を実施しているなか、普通高校を併設しない武蔵野東中学校は、健常児クラス全員が受験を経て高校に進学する。難関高校に進む生徒も多く、2021年度は最難関国立や都立の進学指導重点校、偏差値65以上の私立高校などに、約4割の生徒が合格した。菊地校長は言う。

「12歳で行う中学受験は親の力が必要で、すべてが子どもの意思で、とはいかない。でも15歳なら自分のことを客観的に見ることができるようになり、自分で進路を決められる年齢です。高校受験をきっかけに高校、大学と、自分の将来観を構築することができます」

 中学3年間の教育は中身が濃い。2年間で学ぶ基礎力を蓄えて、最後の1年間で一気に受験へと向かう。

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