「らーめん 福籠」の味噌らーめんは一杯750円(筆者撮影)
「らーめん 福籠」の味噌らーめんは一杯750円(筆者撮影)

 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。札幌味噌ラーメンの名店「すみれ」の味を独自に進化させた浅草橋の人気店の店主が愛する一杯は、同じ浅草橋を盛り上げる脱サラ店主が繰り出す絶品の豚白湯ラーメンだった。

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■味噌ラーメンの専門店が増えないワケ

 JR・都営浅草線の浅草橋駅から徒歩2分。駅近の裏路地にたたずむお店「らーめん 福籠」。札幌の名店「すみれ」出身の店主・畑谷雄飛さんが2013年にオープンした。王道の札幌味噌ラーメンを独自に進化させた一杯が人気の店である。

らーめん 福籠/東京都台東区柳橋1-13-4 浅草橋丹羽ビル1F/11:00~15:00(L.O.14:30)、18:00~22:00(L.O.21:30)/筆者撮影
らーめん 福籠/東京都台東区柳橋1-13-4 浅草橋丹羽ビル1F/11:00~15:00(L.O.14:30)、18:00~22:00(L.O.21:30)/筆者撮影

「すみれ」で11年間の修行後に独立した畑谷さん。当時、東京都では「すみれ」の味が根付いていなかったが、思い切って進出を決意。今や都内をけん引する人気の味噌ラーメン店に成長した。

 近年、ラーメンブームと言われて久しいが、都内では味噌ラーメンの専門店がなかなか増えない。その理由を畑谷さんはこう語る。

「まず、味噌ラーメン自体が寒い地域に根差しているイメージがありますよね。寒い時期ならいいですが、夏場に出る感覚があまりない。そこで敬遠する人は多いと思います。それから、製法が圧倒的に難しいんです」

 中華鍋でスープと味噌を焼きながら作る独特の工程は、他のラーメンにはない難しさがある。ほんの少し加減が変わるだけで、味噌の香ばしさが損なわれてしまう。畑谷さんは一目見ただけでその難しさを感じたという。「すみれ」での修業は大変厳しいものだったが、「すみれ」のラーメンが好きだったからこそ頑張れた。

「この調理工程でラーメンを作ろうとしたこと自体がすごいと思います。味噌ラーメンを作らせてもらえるようになるまでの3年間、横で作り方を見ていましたが、これを自分でできるようになるのか不安で仕方なかったです。本当に集中して作らないと、信じられないぐらい味がブレてしまうラーメンなんです」(畑谷さん)

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井手隊長

井手隊長

井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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