デイブレイクが販売を手掛ける冷凍フルーツ「HenoHeno」。規格外フルーツを商品化した(撮影/写真部・東川哲也)
デイブレイクが販売を手掛ける冷凍フルーツ「HenoHeno」。規格外フルーツを商品化した(撮影/写真部・東川哲也)

 地球規模で課題解決が求められている食品ロス問題。コロナ禍でロス削減の機運は増している。牽引するのは生産者や店舗を消費者と結びつけ、「もったいない」を減らすベンチャーの旗手たちだ。AERA 2021年3月29日号から。

【キャンセル料理のロスをなくす、高級チョコの余った材料で独自ブランド…食品ロスに挑む人たちはこちら】

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 食品ロス削減に取り組む国内のベンチャー企業がコロナ禍で軒並み販売を伸ばし、群雄割拠の様相を呈している。中でも飲食店が苦境を迎える今、注目を集めているのは消費者と店舗をマッチングするアプリ「TABETE」だ。

 飲食店や小売店は、急に発生したキャンセル分の料理やロスになりそうな商品をアプリ経由で販売できる。購入希望者はアプリ上で決済し、指定した時間に店舗へ商品を受け取りにいく。欧州で急成長したデンマーク発祥のベンチャー「Too Good To Go」がビジネスモデルだ。

 TABETEを運営する「コークッキング」(東京都港区)の川越一磨CEO(29)は「気候変動も含めた環境問題の中で、最も『自分ごと化』しやすいのは食べるということ。家庭でのロスも飲食店での食べ残しも、一人ひとりの意識変革で減らせる余地は十分ある」と訴える。

コークッキングCEO/川越一磨さん/1991年東京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、サッポロライオン勤務などを経て、2015年に「コークッキング」創業。19年、一般社団法人日本スローフード協会理事に就任(写真/本人提供)
コークッキングCEO/川越一磨さん/1991年東京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、サッポロライオン勤務などを経て、2015年に「コークッキング」創業。19年、一般社団法人日本スローフード協会理事に就任(写真/本人提供)

■アプリの即時性が強み

 食の未来を切り開くニューリーダーとして期待が集まる川越さんの原点は、大学在学中に4年間勤めた和食料理店でのアルバイトの経験だ。この和食料理店でも、大学卒業後に就職したサッポロライオンでも、まだ食べられる食品を自分の手でゴミ箱に捨てる体験を重ね、心を痛めてきた。

「料理の力を使って創造性や豊かさに寄与したい」と2015年にコークッキングを創業後、スローフードのイベントを手伝う機会があり、あらためて食品ロスの課題に向き合う。啓蒙や啓発活動だけでなく、「社会的なシステムとして実装していく必要がある」と考え、17年にTABETEを立ち上げた。

「食のサプライチェーンの最下流」で店舗と消費者の両方に訴求しやすいポジションが強みと考えている。その強みを生かすツールがアプリだ。

「食品ロスが出そうな瞬間に『誰か助けてください』という声を発信し、キャッチできる即時性が肝です」(川越さん)

 約36万人のユーザーのおよそ7割が女性。30~40代がボリュームゾーンだ。「社会問題への意識も高いこの層がかなめ」と川越さんは言う。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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大量廃棄を目の当たりに